「うちのオンライン研修、このやり方で合っているのだろうか?」

新型コロナウイルスの影響で、オンライン研修(WEB研修)の需要が急激に高まっています。2020年春以降、多くの企業が十分な準備期間を取ることができないまま、研修のオンライン化に踏み切ることとなりました。

教育担当者の中には、実地型の集合研修のノウハウをオンライン研修にうまく活かすことができず、思うような効果が得られていないとお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。または、受講者の反応がその場で分からないため、うまくいっているのかどうかもわからない、という方もいらっしゃるかもしれません。

株式会社マックスパートが行った「コロナ禍の研修に関する調査アンケート」[1]によると、「コロナ前のオフライン(集合型)研修と比較し、オンライン研修の研修成果にはどのような変化があったか」を尋ねたところ、「やや低下」が39.13%で一番多くなっています。

さらに「とても低下した」4.35%であり、全体の約4割が「オンライン研修で成果が低下した」と答えました。

図)「コロナ前のオフライン(集合型)研修と比較し、オンライン研修の研修成果にはどのような変化がありましたか?」という質問への回答

引用元)株式会社マックスパート「【調査リリース】コロナ禍の研修成果に関するアンケート調査 オンラインで開催した研修の成果と今後の実施意向」,
『PRTIMES』, 2020年12月25日, https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000045.000056097.html(閲覧日2021年2月16日)

少なくない企業が、オンライン研修への対応苦慮している様子がわかります。

オンライン研修で成果を得るには、実地型の集合研修とは異なるアプローチ必要になります。もし今うまくいっていないなくても、やり方を変えれば、実地型の集合研修よりも高い効果を得られる可能性があります。

本稿では、オンライン研修を成功させるために必要な事前準備や、スムーズな進行のための工夫をステップで解説します。ぜひ参考にしてください。

[1] 株式会社マックスパート「【調査リリース】コロナ禍の研修成果に関するアンケート調査 オンラインで開催した研修の成果と今後の実施意向」,『PRTIMES』, 2020年12月25日, https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000045.000056097.html(閲覧日2021年2月16日)

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オンライン研修の全体像

まず、オンライン研修の全体像を確認しておきましょう。

基本は実地型の集合研修と変わりません。

企画 → 実践 → 評価 → 改善 PDCAを回していきます。

図)オンライン研修全体像(PDCA)

オンライン研修は、ZoomやGoogle MeetなどのWeb会議システムを利用し、PCやスマートフォン、タブレットを使用して受講する研修です[2]。実地型の集合研修と異なり、PCやインターネット環境さえあれば、場所を問わず参加することができます。

複数の拠点である程度の人数を集めて実施される場合もありますが、新型コロナウイルスの影響が小さくなるまでは、受講者それぞれが自宅で受講する場合がほとんどでしょう。

講師も受講者も同じ「場」を共有していないため、スムーズなコミュニケーションを取るための工夫が特に必要になります。

次章から、上記のサイクルのうち「実践」「評価」「改善」の部分において、どのようなやり方をすれば効果が出るのかを、ステップ形式でご紹介します。

「企画」については以下の記事をご参照ください。

[2] オンライン研修は、Web会議システムを介して随時コミュニケーションを取る双方向型と、録画した講義やあらかじめ用意された学習コンテンツを視聴するオンデマンド型に大別できます。本稿では双方向型について取り上げています。

オンライン研修3つの実践ステップ

オンライン研修を実践するにあたって、限られた時間いつもと異なる環境より大きな成果を得るために、どのように進めていけばよいか、どのような点に注意するべきか見ていきましょう。

ステップ(1) 事前準備
ステップ(2) 研修の進行
ステップ(3) 研修後のフォロー

ステップ(1) 事前準備

まずは、企画したことをスムーズに実施するための事前準備をしていきます。事前準備の出来によってオンライン研修のクオリティが左右される、と言っても過言ではありません。

具体的には、以下のような準備が必要です。

・講師・受講者全員の機材・通信環境や操作方法の確認

講師・受講者全員が、機材の動作確認やWebカメラ・マイクの設定、Web会議システムの操作方法などを、各自で当日までに確認しておく必要があります。テスト接続の機会を設けるとより安心です。

なお、特にグループワークを行う場合など、一定水準以上の機材や通信環境が必要な場合は注意が必要です。それらを用意できない受講者にはPCの支給などが必要な場合も出てきます。

・ルールの取り決めと周知

オンライン研修中にコミュニケーションを取りやすくしたり、限られた時間を有効に使うためのルールを決めて周知しておきます。例えば、以下のようなルールが考えられます。

・チャットや音声のみではなく、原則として「顔出し」とする

(講師がリアクションを確認しやすいため。また、緊張感を保ったり、実地型の集合研修と近い雰囲気を作るため)

・Web会議システムに表示する名前は本名とする

(面識が薄くても気兼ねなく呼びやすいため)

・グループワークの際の発言は五十音順、などとする

スムーズな進行のため。

・発言は挙手のうえ講師が指名してからとする

こちらもスムーズな進行のため。

・音声や通信トラブルの対策

オンライン研修は、声がこもったり小さかったり、周囲の雑音が入りこんでしまうといった問題が起こりやすいものです。

聞き返しが増えるとストレスが溜まり、進行の妨げにもなるため、以下のような対策が必要です。

・受講者は、自分が話すとき以外はミュートにする

意図せず雑音が入ってしまうこともあります。受講者に対して事前に話す時以外はミュートするよう、操作方法と併せて伝えておきましょう。

・静かで声が出せる環境で受講させる

(雑音が多い喫茶店、静かな図書館などは避ける)

また、オンライン研修中に回線が途切れたり、映像が乱れたりといったトラブルが起こった時のために、LINEや社内SNSなど、Web会議システム以外でも同じメンバーで連絡がとれる手段を確保しておく必要があります。

・トラブル対応、テクニカルサポート人員の確保

講師とは別に、トラブル対応やテクニカルサポートのみを行う人員を用意することをおすすめします。

オンライン研修中にトラブルが起こった場合、講師が対応してしまうと進行が妨げられてしまいます。講師には研修の進行に集中してもらい、トラブル対応別のスタッフが担当することで、限られた時間を有効に使うことができます。

ステップ(2) 研修の進行

研修中は、「同じものを共有し、共通の体験をすること」を心がけましょう。

離れた場所にいても一体感を感じられれば、オンライン研修のデメリットの一つである孤独感や寂しさが軽減されます。例えば、以下のようなことが考えられます。

・最初に全員で挨拶をする
・講師が「ここまで理解できた人は腕でマルを作ってください」と呼びかけ受講者に同じ動作をさせる
・事前に各自お菓子を用意しておいてもらい、休憩時間に同時に食べる

そのほか、研修スタッフや一部の受講者に「盛り上げ役」をしてもらうことも有効です。

オンライン研修では、講師はPC画面を介して受講者と接するため、リアクションを把握しづらくなっています。

積極的にうなずいたり、沈黙状態になった際に一言発言してくれるだけでも、講師が研修を進めやすく、また、議論が促され研修が有意義なものとなります。

ステップ(3) 研修後のフォロー

実地の集合研修と同様、オンライン研修の後はフォローが必要です。

受講者にレポート提出を課したりフィードバックを行ったりして、オンライン研修の成果や今後の課題などを確認します。オンライン研修で学んだことを日常業務に活かせるような施策を打ちましょう。

また、研修企画や当日の進め方についても、受講者にアンケートを取るなどして企画のブラッシュアップを図りましょう。

例えば、一般的なWeb会議システムにはアンケート機能が備わっていますので、オンライン研修の最後に満足度を尋ねるということも可能です。

また、LMS(Learning Management System:学習管理システム)にもアンケート機能を持つものがあり、Web会議システムと連携してより便利に運用できる場合があります。

受講者と主催側、どちらもPDCAサイクルを回し、より効果的で効率的なオンライン研修を目指すことが大切です。

LMSとの連携で研修管理業務をより効率良く

オンライン研修の実施にあたっては、実地型の集合研修と同様に、受講対象者の選定や出席状況の確認、研修内容の改善といった業務が発生します。

しかし、実地型の集合研修とは実施環境が異なるため、業務が煩雑化する場合も多いでしょう。

そのようなときにWeb会議システムとLMSを連携すれば、オンライン研修とその他の教育を体系的に管理し、研修管理業務に関する問題を解消することが可能になります。

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まとめ

オンライン研修は、ZoomやGoogle MeetなどのWeb会議システムを利用し、PCやスマホ、タブレットを使用して受講する研修です。実地型の集合研修と異なり、PCやインターネット環境さえあれば、場所を問わず参加することができます。

受講者はそれぞれ自宅等で受講し、同じ「場」を共有できないため、特にスムーズなコミュニケーションを取るための工夫が必要です。

具体的には、次のステップにおける以下のような事前準備や研修中の配慮が考えられます。

ステップ(1) 事前準備

・講師・受講者全員の機材・通信環境操作方法確認
ルールの取り決めと周知
音声通信トラブルの対策
・トラブル対応、テクニカルサポート人員の確保

ステップ(2) 研修の進行

・同じものを共有し、共通の体験をすることで孤独感や寂しさを軽減する
・研修スタッフや一部の受講者に「盛り上げ役」をしてもらう

ステップ(3) 研修後のフォロー

レポート提出フィードバックによりオンライン研修の成果今後の課題を確認
・受講者にアンケートを取り次のオンライン研修企画のブラッシュアップ

オンライン研修の実施については、実地型の集合研修とは環境が異なるため、管理業務が煩雑化する場合があります。

そのようなときは、Web会議システムとLMSを連携すれば、オンライン研修とその他の教育を体系的に管理し、研修管理業務に関する問題を解消することが可能になります。

新型コロナウイルスの影響はしばらく続くことが予想されます。今、オンライン研修のノウハウを身に付けておけば、実地型の集合研修ができなくても、効果的な教育を行うことができます。

ぜひこの機会にオンライン研修のやり方を再検討してみてはいかがでしょうか。

参考)
「オンライン研修の始め方|オンライン研修を成功させるコツと注意点」,『人事の知恵袋』,2020年7月1日,https://www.kakehashi-skysol.co.jp/chiebukuro/onlinekenshu_houhou/#i-15(閲覧日:2021年1月7日)
「オンライン研修のコツとやり方!【zoom等の無料システムも紹介】」,2020年4月24日/2020年4月28日更新,https://kaijosearch.com/article/online-kenshu/(閲覧日:2021年1月7日)
「5分で分かる「オンライン研修」!成功の秘訣やツールを事例付きで解説」,『テレワークナビ』,2020年10月22日,https://www.nice2meet.us/what-is-online-training-and-what-can-we-do-for-success(閲覧日:2021年1月7日)
「【半年間で約70企画】オンライン研修をやってみて見えてきた企画・実施の勘所」,『AiDEM 人と仕事研究所』,https://apj.aidem.co.jp/cgi/index.cgi?c=column_zoom&pk=1430&sk=1(閲覧日:2021年1月7日)
志村智彦「オンラインzoom研修を成功させるための17の視点〜2日間の研修をzoomでやり切って見えてきたこと〜」,『note』,2020年4月14日,https://note.com/kokolozashi/n/n372401d28b59