人材アセスメントとは?メリット、人材育成に活かすポイントを解説
「人材アセスメントという言葉はどうも漠然としているが、具体的に企業の人材育成に活用するにはどうすればよいのだろうか?」
人材アセスメントは、第三者機関による審査で従業員を客観的に評価することができるツールです。非常に信頼性が高く、人事評価や開発において有効であると言えます。
とはいえ、一口に「人材アセスメント」と言っても多種多様であるため、「どのように活用すれば良いか」「自社にあったツールはなにか」などが分からず導入に踏み切れない企業も多いのではないでしょうか。
企業が人材アセスメントを実施する最たる目的は、評価を通じて配置の最適化や人材育成の効率化を図ることです。また、アセスメントを定期的に実施していくことで、配置後の状況確認やその後の育成計画に役立てることもできます。
そこで本稿では、人材アセスメントの特徴や、導入する際の活用方法、ポイントなどを解説します。
人材育成の基本から、計画の立て方、効果的な教育手法、そして学習管理システム(LMS)の最新活用法までをコンパクトに解説。人材育成に関する悩みや課題を解決するための完全ガイドです。
目次
人材アセスメントとは
人材アセスメントとは、「客観的視点で人材の能力を評価し、見える化することで人材育成や人材開発に役立てるためのツール」です。人材アセスメントの手法は多種多様で、知能検査や性格検査、適性検査などの検査によって審査するものや、アンケートやテスト教材を用いてその理解度を把握し評価するものなどがあります。
実は人材アセスメントの歴史は長く、第二次世界大戦前後にアメリカやイギリス、ドイツなどでスパイや親衛隊の人材評価プログラムとして生まれました。日本企業では、1975年頃から活用されています。
では、人材アセスメントの意味や特徴についてみていきましょう。
人材アセスメントの意味
「assessment(アセスメント)」は、日本語で「評価・査定」を意味します。多くの場面ではそこから派生した「物事が周囲の人やもの、環境に与える影響についてあらかじめ調査し、評価する」という意味で使われています。
例えば看護の分野では、アセスメントを行うことで患者の情報を的確に分析し、今後の方向性を決めます。
一方で、人事分野における「アセスメント」は、「人材を客観的視点から能力を診断し、企業や組織の中で適切な人材配置や開発を行うこと」を意味しています。
人材アセスメントと従来の人事評価の違い
人材アセスメントの最大の特徴は、人材を第三者が審査し、評価するという点です。
従来の人事評価は、従業員のスキルや実績、成果などをもとに、上司などが評価を行うものでした。現場での仕事ぶりのみを見て評価するため、その人材が持つ潜在的な能力を見出すことは難しいと言えます。
また、主観が介入し公平性に欠けることから、従業員からの不満が出ることも少なくありません。
一方で人材アセスメントは、人材の能力を第三者機関による客観的視点で評価し、人材が本来持つ能力を見える化することで的確な人材育成・開発、人事配置を促すツールです。
人材アセスメントを活用した人事評価であれば、第三者が審査するため、信頼性が高いと言えるでしょう。単に評価をするだけではなく、潜在的な能力まで可視化し、どんな環境・職務が最適であるかを判断することが可能になります。
また、主観が介入せず公正な評価がなされるため、従業員が納得しやすいという良さもあるでしょう。
「人材アセスメント=人事評価」ではない
人材アセスメントは、人事評価の一種だと誤解されることもあります。しかし、「人材アセスメント=人事評価」ではありません。
人材アセスメントは、人材を審査・評価するとはいえ、直接人事評価するものではありません。あくまで人事評価をする際の一つのツールにすぎず、企業がその結果を人事開発などに活用することを目的としています。
人材アセスメントで出た結果を人事評価にそのまま結びつけるのではなく、解釈・理解・分析をして活用することが大切です。活用のポイントについては、後ほど紹介します。
人材アセスメントが必要とされる背景
終身雇用を前提とした年功序列型の終焉
これまでの日本企業は年功序列で昇進や昇給がなされており、また、終身雇用を前提に全員がジョブローテーションで様々な職務をこなしながら足並みをそろえて成長していく形が一般的でした。リーダーは、その過程で選抜されています。
しかし現代では、少子高齢化による労働人口の減少や転職者の増加によって優秀な人材が確保しにくくなり、かつマネジメント人材の不足が深刻化しています。今後人材の流動性が高まるほど、優秀な人材を自社に確保しておくことが難しくなっていくでしょう。
そのため、リーダー候補の見極めや人材配置の現場では、これまで以上にスピードと効率性が求められています。
プレイングマネージャーの増加、働き方の多様化
プレイングマネージャーが増える中、「どれだけ部下を見られるか」という量的な課題があります。さらに、自身も数値目標を抱えながら「どれだけ客観的に部下を評価できるか」という質的な課題も浮き彫りになり、キャパシティーオーバーを実感している企業も多いでしょう。
新型コロナウイルスの影響でテレワークが増加し、個人の働きぶりや育成状況が見えにくくなったことも、この課題を大きくしています。
さらに、働き方の多様化や人材のグローバル化により、すべての人を一様に評価するようなこれまでの評価制度は通用しなくなってきています。一人ひとりのスキルや個性、能力を最大限に活用することが求められているのです。
人材アセスメントは、人材の能力を客観的に評価し、潜在能力を可視化することで、こうした課題への打ち手として効果を発揮します。
以下では、企業において人材アセスメントが実際にどのように活用できるか、見ていきましょう。
人材アセスメントの目的別メリット
人材アセスメントは、企業が必要としているもの、解決したい課題などに鑑みて、それぞれに合った活用方法を取るのが一般的です。
例えば、以下のような場面で効果を発揮します。
- 人材採用
- 人材配置・異動
- 管理職の選任
- 人材育成
人材採用
採用時に、試験や検査を用いてあらかじめ応募者のスキルや潜在能力を把握しておくことで、自社に必要な人材を採用しやすくなります。面接では好印象だったのに、入社後は社風に合っていなかった、早期に退職してしまったなど、ミスマッチによって生じる問題の未然防止に役立つでしょう。
また、入社後の配置や教育方針の参考にもなります。例えば、リーダーの素質やマネジメント能力を持つ人材がいた場合、将来リーダーや管理職などになることを見据えて早期から配置・教育を工夫することが可能になります。
人材の配置・異動
部署で人員不足が出た場合や新規プロジェクトを立ち上げる場合には、新しい人材の配置や異動が必要です。人材アセスメントの活用で従業員の能力を把握しておけば、スムーズな人材発掘と配置転換が可能になります。
また、新卒社員にも同じように活用すれば、配属先を検討する際の参考になります。
管理職の選任
実務能力の高い社員が管理職候補になることは珍しくないでしょう。しかし、その社員にリーダーシップやマネジメント能力があるとは限りません。
現場の評価だけを尊重してことを進めることにはリスクがあります。実務面の成果と、マネジメントへの適性は別問題だからです。いくら成果を上げることができても、総合力を持っていなければ人をマネジメントすることは難しいのです。
人材アセスメントを活用し、客観的評価でマネジメントに向いていると判断した人材を昇進させることで、このような問題を避けることが可能になります。
人材育成
人には少なからず向き不向きがあります。「営業としては成果を出せなかった従業員がマーケティング業務では大きく成果を出せた」といったケースは珍しくありません。
人材が持つ素質や潜在能力を把握し、それに準ずる研修や教育を行うことで、従業員が最大限の能力が発揮するよう促すことが可能になります。
このように、人材アセスメントで従業員の能力を把握しておけば、様々な場面に活用できます。自社が抱える課題や経営方針に合わせて、活用方法を検討すると良いでしょう。
人材アセスメント導入のポイント
人材アセスメントの導入の際には以下のようなポイントを抑えておきましょう。
- 明確な目標設定
- 測定する項目の決定
- 自社に合ったツールの選定
- アセスメント結果の理解・分析
- 定期的な従業員の成長の管理・教育方針の再設定
明確な目標設定
人材アセスメントは非常に多様であり、活用方法によって得られる効果は異なります。
導入前に「なぜ人材アセスメントが必要なのか」「人材アセスメントでどのような課題を解決したいか」「人材アセスメントを活用してどのような結果を得たいか」といったことを明確にし、自社にあった人材アセスメントを考えることが大切です。
測定する項目の決定
目標を設定したら、その目標を達成するためにはどのような項目を測定するべきかを考えます。業務に直結するスキルだけではでなく、積極性・決断力・協調性などパーソナルな部分も測定すると良いでしょう。
「測定項目は多いに越したことはない」と考えるかもしれませんが、あまりにも多すぎると情報の分析が難しくなります。必要なものを的確に判断し、選定するようにしましょう。
自社に合ったツールの選定
様々な企業が人材アセスメントツールを提供していますが、測定するための手法や項目はそれぞれ異なります。知名度に頼らず、自社が設定した目標と測定内容に合うサービスを選ぶようにしましょう。
まずは問い合わせてみるのが一番です。
アセスメント結果の理解・分析
実際に人材アセスメントを実施したら、必ず得た情報を分析しましょう。先述したとおり、人材アセスメントは適切な人事評価・開発を促すためのツールです。「実施して表面的に理解して満足」では真の効果は得られません。
結果を効率よく具体的な打ち手につなげていくためにも、分析による理解は最も重要です。
また、しっかりと分析することで、あらかじめ設定した目標の達成だけでなく、新たな課題や自社の強みが見えてくることもあります。DX時代、得た情報は120%活用するつもりで臨みましょう。
定期的な従業員の成長の管理・教育方針の再設定
組織も人も、常に変化します。このため、人材アセスメントは一度きりではなく、定期的に行い、目的や測定内容をアップデートしていくことをおすすめします。
こうすることで、課題の見直しはもちろん、自社に求められる人材のブラッシュアップや、教育の質向上が可能になります。
アセスメントという定点観測と、組織と人の成長を結び付けて考えることで、変化に強いしなやかな人事マネジメントが可能になるでしょう。
人材アセスメントは闇雲に導入するだけでは最大限の効果は発揮できません。しっかりと自社にとって必要なものは何かを把握した上で、活用するようにしましょう。
人材アセスメントには、育成と評価を両立できるシステムが求められる
こと「成長」に着目した場合、アセスメントツールとしてLMS(Learning Management System: 学習管理システム)を活用することは合理的と言えます。
LMSは、一般的に「eラーニングの運用管理システム」とイメージされていますが、最近のLMSは大変多機能です。学習を支援する機能のほかに、アンケートの実施や集計、中にはスキル評価の仕組みを備えたものもあります。
LMSを人材育成に活用する企業はもはや珍しくありません。2015年時点で、従業員規模3,000人以上の企業の95.8%がeラーニングを導入したというデータがあります[1]。また、世界的に見ても、LMS市場は2020年時点で134億ドル、2025年には257億ドルに拡大すると予測されています[2]。
多機能なLMSを使いこなすと、人材育成に関するアセスメントと育成を一括で実施できるというメリットがあります。例えば、新人向けや中堅向け、管理職向けにそれぞれ最適なアセスメントを作成し、定期的に実施することで弱点の洗い出しや今後強化すべき分野を可視化することができます。
ポイントは、これを個人ごとに可視化できるということです。例えば当社製のLMS「CAREERSHIP®」を使うと、対象となる従業員にアンケート形式のアセスメントを配信し、その結果を記録、さらに、そのアセスメントで明らかになった弱みを補完するeラーニング教材を配信し、受講した一定期間後に再度アセスメントを実施して効果を測る、といった一連の施策を一つのシステム内で完結できます。
これからの時代、企業教育は「教える」から「個々人の成長を支援する」スタイルに変わっていきます。
学習はより個人的な体験として、いわばオーダーメイドの形で従業員に届けられます。各人が自分の弱点を克服し、長所を伸ばす―これを繰り返すことで、従業員の能力の底上げと、組織的な成長を継続的に目指していくことが、DX時代に追求される教育手法です。
LMSはその大きな一翼を担うことになるでしょう。すでにeラーニングを導入している企業では、ぜひ今あるLMSの機能を確認し、アセスメントと教育の一括運用をご検討ください。もう、「LMSを教育に使うだけではもったいない時代」が来ています。
[1] 日本能率協会マネジメントセンター「国内企業360社対象 eラーニングに関する実施状況調査」(2016/04/11)<https://www.jmam.co.jp/topics/1223801_1893.html>(閲覧日:2020/10/12)
[2] MARKET AND MARKET「Global Forecast to 2025」
人材育成の基本から、計画の立て方、効果的な教育手法、そして学習管理システム(LMS)の最新活用法までをコンパクトに解説。人材育成に関する悩みや課題を解決するための完全ガイドです。
まとめ
人材アセスメントとは客観的視点で人材の能力を評価し、見える化することで人材育成や人材開発に役立てるためのツールです。第二次世界大戦前後でアメリカやイギリスドイツなどでスパイや親衛隊の人材評価プログラムとして生まれ、1975年頃から日本企業でも活用されています。
そもそも「assessment(アセスメント)」とは、「物事が周囲の人やもの、環境に与える影響についてあらかじめ調査し、評価する」という意味で使われており、人事分野においては、人材を客観的視点から能力を診断し、企業や組織の中で適切な人材配置や開発を行うことを意味します。
人事アセスメントの最大の特徴は、人材を第三者が審査し、評価するという点です。従来の人事評価では、現場での成果をもとに上司が評価していましたが、人材アセスメントは人材の能力を第三者機関による客観的視点で評価し、人材が本来持つ能力を見える化することで的確な人材育成・開発、人事配置を促します。
人材アセスメントは人事評価の一種だと誤解されがちですが、そうではなく、あくまで人事評価をする際の一つのツールでありその結果を人事開発などに活用することを目的としています。
少子高齢化や労働人口の減少などにより、今後は管理職のポストが不足することが予想されます。その際、従来のジョブローテーションや人事評価では最適な人材を選出することは難しいでしょう。また、働き方の多様化や人材のグローバル化により、すべての人を一様に評価するようなこれまでの評価制度ではなく、一人ひとりのスキルや個性、能力を最大限に活用することが求められています。
このような背景から、人材アセスメントは、現代の企業が抱える課題解決に非常に有効であり、必要なツールと言えるでしょう。
人材アセスメントは、企業が必要としているもの、解決したい課題などを鑑みて、それぞれに合った活用方法を取るのが一般的です。
例えば、以下のような場面で有効に働きます。
・人材採用
・人材配置・異動
・管理職の選任
・人材育成
人材アセスメントで従業員の能力を把握することで様々な場面に活用できるため、自社が抱える課題や経営方針に合わせて、活用方法を検討しましょう。
人材アセスメントを導入する際には以下のようなポイントを抑えておきましょう。
(1) 明確な目標設定
(2) 測定する項目の決定
(3) 自社に合ったツールの選定
(4) アセスメント結果の理解・分析
(5)定期的な従業員の成長の管理・教育方針の再設定
人材アセスメントは闇雲に導入するだけでは最大限の効果は発揮できません。しっかりと自社にとって必要なものは何かを把握した上で、活用するようにしましょう
こと「成長」に着目した場合、アセスメントツールとしてLMS(Learning Management System: 学習管理システム)を活用することは合理的と言えます。
最近のLMSは大変多機能であり、アンケートの実施や集計、中にはスキル評価の仕組みを備えたものもあります。LMSは今後、国内外問わず様々な人材育成シーンでより活用が進むでしょう。
多機能なLMSを使いこなすと、人材育成に関するアセスメントと育成を一括で実施できるというメリットがあります。ポイントは、これを個人ごとに可視化できるということです。
学習はより従業員の能力の底上げと、組織的な成長を継続的に目指していくことが、DX時代に追求される教育手法です。
LMSはその大きな一翼を担うことになるでしょう。
人材アセスメントは、企業内の人事における課題解決において有効なツールです。手法はサービスごとに様々ですが、中でもLMSを活用したアセスメントを実施することで従業員の「成長」にも大きな効果を発揮するでしょう。
LMSをすでにeラーニングを導入している企業では、ぜひ今あるLMSの機能を確認し、アセスメントと教育の一括運用をご検討ください。もう、「LMSを教育に使うだけではもったいない時代」が来ています。
参考)
人材アセスメント
https://www.recruit-ms.co.jp/service/theme/assessment/
人や組織の特性を「見える化」するアセスメント テストで人のことが分かるのか?
https://www.recruit-ms.co.jp/issue/column/0000000040/
人材アセスメントとは!必要性や導入の効果まで解説【人事向け】
https://techacademy.jp/biz/hrmagazine/2252/
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