優秀な内定者を確実に入社につなげるために、内定者フォローを効果的に行いたい

内定辞退が一般的になった昨今、内定者と信頼関係を構築し、自社を入社先として決心してもらうためには内定者フォローが求められます。内定者の心を掴み、入社に向けて意欲が高まる内定者フォローとはどのようなものでしょうか。

本稿では、内定者を対象にした複数の調査結果をもとに、エンゲージメントを高めて入社の意思決定を後押しする内定者フォローについて解説します。具体的な実施方法やポイント、内定者フォローに取り組む企業事例についても紹介しますので、内定辞退の対策にぜひ参考にしてみてください。

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内定者フォローとは?

内定者フォローとは、採用活動の一環として企業が内定を出した学生に対して行う継続的なコミュニケーションのことを指します。

主に、内定者のモチベーションを維持し、彼らの不安や疑問を解消すること、そして最終的にスムーズな入社を促進することが目的です。

方法としては、電話やメールでの定期的なコンタクトや、内定者向けのイベント・セミナーの開催などが挙げられます。適切なフォローを行うことで、企業と内定者との信頼関係を深め、内定辞退などのリスクを低減することが期待されます。

内定者フォローの目的

内定者フォローの目的として、以下が挙げられます。

  • 内定辞退の防止
  • モチベーションの維持・向上
  • 入社に向けた企業理解の促進

内定辞退の防止

内定を出したからといって、その学生に必ず入社してもらえるとは限りません。内定後に入社を辞退されてしまう「内定辞退」を防ぐのが、内定者フォローの主な目的といえます。

新卒採用の売り手市場が続く中、多くの企業にとって、内定辞退は大きな課題ではないでしょうか。株式会社リクルートの調査によると、2023年卒業者の3月時点での就職内定辞退率(就職内定辞退人数÷就職内定取得人数)は65.8%でした。[1]これは、10人に内定を出しても平均して6人以上が辞退してしまう計算です。

1社から内定を獲得しても、よりよいと思える企業を求めて就職活動を続ける就活生は珍しくありません。企業側が内定を出した後に何もフォローがない状態では、入社までに内定者の関心が離れてしまうのは必至です。

内定後も、学生にはまだ入社までの間に多くの不安や疑問が浮かび上がることがあります。

新しい環境についての不安が大きくなれば、「本当にこの会社に決めて良いのだろうか」と考えてしまうこともあるでしょう。また、他社からも内定が出ることがあれば、その企業と比較される可能性もあります。

内定者フォローを通して、これらの不安を解消し、彼らが安心して入社を迎えられるようサポートすることは非常に重要です。これにより、内定辞退を大きく減少させることが期待できます。

モチベーションの維持・向上

入社を控える内定者のモチベーション管理は、その後のパフォーマンスや満足度に直結します。フォローを通じて、彼らの業務への期待や興奮を維持・向上させることも内定者フォローの目的です。

定期的なコミュニケーションを持つことで内定者のことを大切に思っていることを示し、企業への愛着を醸成することが重要といえます。

入社に向けた企業理解の促進

内定者フォローは、入社前の段階で企業文化や仕事の内容を深く理解するための重要な機会になります。

事前に企業のミッションやバリュー、業務の流れなどを知ることで、入社初日からスムーズに業務をスタートすることができます。また、企業の風土やチームの雰囲気など、具体的な情報を共有することで、入社後どう働くかのイメージを持ちやすくすることもできるでしょう。

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内定者フォローの施策例

内々定から入社まで、内定者期間は長期に渡り、それぞれのフェーズに応じた内定者フォローを行う必要があります。代表的な方法として、以下のようなものが挙げられます。

  • 内々定通知
  • 面談・定期連絡
  • 内定者懇親会
  • 内定式
  • 内定者研修
  • 社内イベントなど

内々定通知

選考の結果、採用の意思を学生に伝える際、正式な内定日である10月1日より前は「内々定」を出しますが、この内々定通知が内定者フォローの第一歩と言えます。

内定者が前向きに受け取るためには、画一的な定型文だけの通知は避けたいところ。内定者にとって企業に自分が必要とされていることを実感・納得できる内容が望ましいでしょう。具体的には、選考活動中のやり取りを踏まえた内容や、その人を採用したい理由が伝わるメッセージを添えるなどです。

また、採用の意思は遅滞なく伝えることも大事です。前述のマイナビ「2023年卒内定者意識調査」によると、複数の内々定をもらった場合に通知のタイミングが意思決定に「影響する」という声は59.6%にのぼりました。[2]

とは言え、内定通知が早ければ早いほどよいと考えるのは早計です。就職・採用活動の早期化・長期化が懸念される中、政府は経済団体などに宛て要請を出し、就職・採用活動の日程を下記のように示しています。[3]

広報活動開始卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降
採用選考活動開始卒業・修了年度の6月1日以降
正式な内定日卒業・修了年度の10月1日以降

就職・採用活動の円滑な実施と、学生が学業に専念できる環境確保のために、企業はこれらの日程を遵守することが求められます。この日程に従うと内々定通知は早くても6月1日以降となるでしょう。

なお、広報や採用選考の日程以前にインターンシップを行う企業もあるでしょうが、インターンシップ参加の有無が選考に影響するなど、実質的な採用活動になってはいけません。

面談・定期連絡

早期に内々定を出すほど、正式な内定や入社までに期間が空きます。面談やメール連絡などで定期的にフォローを行い、信頼関係を構築していきましょう。

マイナビが行った「2023年卒大学生活動実態調査(6月)」では、不安が軽減した内定者フォローの内容を調査しています。「内々定後、入社意思の高い企業から受けたフォローで、最も不安が軽減されたもの(単一回答)」という質問に対し、回答が多かったのは以下の選択肢でした。[4]

  • 人事との面談(WEB)…21.3%
  • 人事との面談(対面)…15.1%

Webや対面での直接的なコミュニケーションが入社意思の後押しにつながることが示されています。しかし、度重なる呼び出しや頻繁すぎる連絡は、内定者の負担になる恐れがあります。Web面談やメールも活用し頻度にも配慮するなど、学生生活や就職活動の妨げにならないような運用が必要です。

内定者懇親会

他の内定者との交流を深めることも、入社意欲を高めるために重要です。内定先とは言っても学生にはまだ十分に馴染みのない環境であり、同じ立場である内定者同士は、共感や情報交換がしやすいものです。同期と入社後のビジョンを共有し、仲間意識を醸成することで、その企業で自身が働く実感が高まることが期待できます。

対面で集まる機会を頻繁に設けるのは難しいですが、オンラインでのイベント内定者SNSを利用したコミュニケーションも一つの方法です。気軽にコミュニケーションを取れる機会を積極的に設けましょう。

ただし注意すべき点として、参加の強制は避けなくてはなりません。過去には、人事担当者が内定者をSNS交流サイトに登録させて頻繁な接続を求め、追い込まれた内定者が自殺に至った事件もありました。行きすぎた囲い込みにならないよう、あくまで内定者のエンゲージメントを高めるという目的を忘れず、本人の自主性を尊重することが重要です。

内定式

正式な内定通知の式典である内定式は、多くの企業で10月1日以降に行われます。一般的な実施内容は次のような内容です。

  • 採用内定書授与
  • 内定承諾書の提出
  • 経営層の挨拶
  • 懇親会 など

内定式は内定者が企業理解を深めてこの企業で自分が働くという実感を持ち、入社への意欲を高める重要なイベントです。それと共に、内定者が一堂に会する初めての機会である場合も多いでしょう。懇親会やセミナーなどを併せて実施し、内定者同士の交流の場として活用するケースも多く見られます。

このほか、内定者研修や職場見学などが同時に行われることも多く、自社の事業に関連した特色ある内定式を行う企業も見られます。

内定者研修

入社に備えて内定者研修を行う企業もあります。ビジネスマナーや社会人としての心構え、業界知識や企業理念などを身につける機会を提供し、内定者の不安解消早期の戦力化を狙います。実施方法は集合研修や職場見学、eラーニングなどの教材提供、資格取得支援など、さまざまです。

内定者研修は、内定者の成長意欲を支援しエンゲージメントを高める機会になりますが、学業や他社への就職活動の妨げにならない頻度や回数に留意しましょう。また、あくまで内定者が自主的に参加するものであり、無償での参加強制は違法になります。受講の義務づけや、任意参加であっても研修内容が業務にあたる場合は、労働と見なされ賃金の支払い義務が発生する場合がありますので、注意が必要です。

内定者の主体的な学びを促し、費用対効果の高い研修を実施するために、eラーニングなどオンラインの活用も有効です。

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社内イベントなど

社内で開催するイベントに内定者を招待することで、企業文化に触れたり先輩社員と交流したりといった機会を作れます。もともと開催予定だった行事に内定者を招待するやり方は、特別な準備が不要で比較的手軽な方法と言えます。

忘年会や新年会、スポーツ大会など、カジュアルなイベントであれば、内定者も気負い過ぎずに企業の雰囲気に慣れることができるでしょう。周年記念行事や社内表彰、展示会などのイベントも、企業について理解を深める機会になります。こちらもあくまで自由参加形式を守りましょう。

内定者フォローの企業事例

内定者フォローをどのように行うか検討する際は、実際の企業事例も参考になります。ここでは内定者フォローを実施している企業事例として、下記の3社を紹介します。

  • KDDI株式会社
  • 株式会社サイバーエージェント
  • 株式会社GA technologies

KDDI株式会社

KDDIは、6月の内々定から入社までの内定者期間に、フェーズに応じたさまざまな内定者フォローを行っています。

内々定者向けには、働き方の理解内々定者同士の交流を深めることを目的に、社員訪問や座談会、懇親会などが実施されます。オンライン中継による事業所紹介、仮想空間での社内ツアーなど、オンラインも積極的に活用していることも特徴です。

10月1日の正式な内定後は、業務内容説明会と希望業務アンケート、人事や配属部門との面談など、入社に向けた具体的なキャリアプランのサポートを受けることができます。

同社が例示したスケジュールでは、時期にもよりますが、月1~2回程度は何らかの内定者フォローがあるペースです。フェーズに応じて目的を明確にした内定者フォローを行い、入社にむけて着実に内定者のエンゲージメントを高めていく体制がうかがえます。

株式会社サイバーエージェント

サイバーエージェントでは、「新卒1年目からスタートダッシュを切る」ための内定者向け応援プログラムを設けています。

内定者は、内定者アルバイト制度やキャリア戦略研修、事業部研修といったプログラムを通じて、自身のキャリアプランを描き企業や事業内容について理解を深めることができます。

また特徴的なのが、早期内定承諾者を対象にした、同期や先輩社員とゼミ形式でスタートダッシュに取り組む「スタゼミ」や、配属と関係ない若手先輩社員によるメンター制度「ナナメン」です。

プログラムへの参加は立候補制で、内定者の成長意欲に最大限応えるプログラムと言えるのではないでしょうか。同社ではこの他にも、社内イベントの全社表彰に内定者を招くなどの取り組みを行っています。

株式会社GA technologies

不動産売買を手掛けるGAテクノロジーズは、国家資格である「宅建」(宅地建物取引士)の取得を推進しており、内定者にも資格取得のサポートを行っています。

内定者には、自主学習用の指定教材が提供されます。本番の試験に合わせた年4回の模試があり、模試の結果に合わせて1on1の個別フォローを受けることができる仕組みです。

ただ資格取得を奨励するのではなく、具体的に勉強に役立つ教材や仕組みを提供することで、効果的な支援を実現していると言えるでしょう。また、宅建の必要性やどう業務に役立つかといった説明にも力を入れ、内定者がモチベーションを維持し主体的に取り組めるようにサポートしています。

内定者が望む内定者フォローとは?

企業が行いたい施策と内定者が受けたいフォローの内容には、少なからずギャップがあるものです。内定者を対象にした調査を元に、内定者が本当に望む内定者フォローの内容を押さえておきましょう。

効果の高かった内定者フォロー

株式会社ディスコが実施した「調査データで⾒る「入社に向けた内定者フォロー」-2023年卒調査-」[5]によると、内定者が入社予定企業から受けたフォローのうち、「入社意欲が高まった」という回答の上位3つは下記の内容でした。

  1. 内定者懇親会(対面)……62.9%
  2. 社員を交えた懇親会(対面)……57.4%
  3. 社内や施設などの見学会(オンライン含む)……51.1%
入社予定企業から受けたフォロー
株式会社ディスコ「調査データで⾒る「入社に向けた内定者フォロー」-2023年卒調査-」,2023年3月27日公表,p.9(閲覧日:2023年7月18日)

「内定者懇親会」「社員を交えた懇親会」は多くの内定者が「フォローを受けた」と回答しており、入社意欲向上にも十分な効果があったことがわかりました。同期や先輩社員と対面でコミュニケーションを取ることにより、不安の解消やモチベーション向上につながったと考えられます。

一方、「社内や施設などの見学会(オンライン含む)」は「フォローを受けた」と回答した内定者が19.5%しかいなかったのに対し、入社意欲が高まった割合は51.1%と、非常に高い効果が見られました。

今まで内定者向けに社内や施設などの見学会を行っていなかったのであれば、オンラインでの開催も視野に入れながら、実施を検討すべきといえるでしょう。

内定者が「あればよかった」と感じた内定者フォロー

実際には行われなかったものの、内定者からの希望が多い施策としては内定者研修が挙げられます。

ライトワークスが2023年に実施した「内定者研修の実施状況と内定者のホンネ調査」では、「内定者研修(勉強会や課題提出などを含む)」が実施されたのは22.4%で、7割以上の回答者は内定者研修を経験していませんでした。

一方で、内定者研修が実施されなかった内定者に「内定者研修を実施してほしかったか否か」を調査したところ、「実施してほしかった」が42.2%と、「実施しなくて良かった」(19.2%)の2倍以上の回答率となりました。

内定者研修を実施してほしいと思ったか(単一回答)

内定者研修に関する調査結果 ‐ 近年の内定者への調査(2023年8月、株式会社ライトワークス)

内定者研修を実施してほしかった理由としては、約3割が「入社前に業務に関する知識・スキルを身につけておきたかった」という旨の回答でした。また、約2割が「不安を解消したかった」という旨の回答となっており、研修を通して自信をつけることで不安を解消したかったと感じていたことがうかがえます。

内定者研修で学びたい内容は?

同調査の「内定者研修ではどのようなことが学べると良いと思うか」という質問では、上位3つの回答は下記の通りでした。

  1. 社会人へのマインドセット……40.5%
  2. 入社予定の企業・業務に関する知識……39.8%
  3. ビジネスマナーやパソコンスキル……34.8%
内定者研修に関する調査結果 ‐ 近年の内定者への調査(2023年8月、株式会社ライトワークス)

これらは新入社員研修で実施されることの多いカリキュラムではありますが、内定者研修として入社前から学んでもらうことで、早期戦力化という面のみならず、内定者のエンゲージメント向上にも効果をもたらす可能性がありそうです。

前述の「内定者研修を実施してほしかった理由」でも、入社後に必要とされるスキルを身につけて不安を払拭したいという意見が多く聞かれていました。

特に、ビジネスマナーやパソコンスキルの習得は「社会人へのマインドセット」「入社予定の企業・業務に関する知識」とも関連します。内定者研修を行う際はぜひ組み込みたい内容といえるでしょう。

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内定者フォローの効果を向上させるポイント

内定者フォローにはさまざまな方法がありますが、やみくもに実施しても効果は見込めません。内定者の立場に立ってエンゲージメントを高めるには、以下のポイントを押さえるとよいでしょう。

  • 内定者の不安を解消する
  • 内定者の負担を考慮した頻度・内容にする
  • オワハラ・参加の強制にならないよう注意する
  • 対面とオンラインを使い分ける

内定者の不安を解消する

入社を決意してもらうには、内定者の抱える不安を理解し解消することが重要です。ライトワークスの調査では、内定後に「特に不安はなかった」と回答したのはわずか2割程度であり、残り8割の内定者は何らかの不安を抱えていたことが推察されます。

内定後に不安を感じたことについて、上位の回答は下記の通りです。

  1. 「仕事をできるようになるか」(49.5%)
  2. 「この会社に入社を決めてよかったのか」(31.4%)
  3. 「期待されている成果を出せるのか」(26.0%)

その他の回答は下記のようになっています。

内定後に不安を感じたこと

内定後に不安を感じたこと
内定者研修に関する調査結果 ‐ 近年の内定者への調査(2023年8月、株式会社ライトワークス)

また、マイナビの「2023年卒内定者意識調査」でも、入社を決意させた要素として、以下のような回答が挙がりました。[6]

  • 面接のフィードバックで、自分が話したエピソードや人柄へのコメントなどから、入社してほしいという根拠がわかった
  • 企業の雰囲気の情報が少なく入社を迷っていることを伝えると、個人向けに説明会を開催したいとの言葉があった。対応力のある企業に感じた
  • 複数内定先からどこにすべきか考えているとき、自社を贔屓せずに公正に親身になって一緒に考えてくれ、感銘を受けた
  • 自分の就職活動、ひいては人生のことを第一に考えてくれた

面接のフィードバックなど根拠のある承認の言葉、就職活動の応援や不安に寄り添う言動がうれしかったという声が見られます。こうした姿勢が企業に対する信頼感を高め、入社を決心する後押しとなることも少なくないようです。

内定者の負担を考慮した頻度・内容にする

内定者期間は、学生にとって卒業研究や各種の実習などと重なる忙しい時期でもあり、学業への配慮は必須です。内定者のつなぎ留めに熱心になるあまり、内定者の生活の妨げや心理的な負担になってしまっては、却って企業の印象を悪くしてしまいます。

ライトワークスの調査では、内定者が望む接触頻度は「月1回程度」(23.8%)「2・3ヶ月に1回程度」(19.9%)「月2・3回程度」(17.6%)の順に多くなっています。

内定先との接触頻度は、どれくらいがちょうど良いか(単一回答)

内定先との接触頻度は、どれくらいがちょうど良いか
内定者研修に関する調査結果 ‐ 近年の内定者への調査(2023年8月、株式会社ライトワークス)

前述した政府による要請にも、採用選考活動は学事日程や健康状態などに十分に配慮するよう記載されています。具体的には授業や実験、実習などと重ならないような日時の設定や、事前に余裕をもって連絡することなどです。内定者フォローについても、こうした配慮を徹底しましょう。

オワハラ・参加の強制にならないよう注意する

前述の政府の要請でも、「採用選考における学生の職業選択の自由を妨げる行為の防止の徹底」が述べられており、オワハラ(就活終われハラスメント)防止の意識は高まっています。オワハラと見なされれば、内定者個人との関係だけでなく、企業の社会的信用を損ないかねません。

例として、他社への就職活動を終えるように迫る、内定を辞退したら研修費用の返還を求めるなどが挙げられています。こうしたあからさまな要求はもちろん、内定者がプレッシャーを感じるような執拗な連絡や、研修やイベントに参加しないと不利益を被るようなほのめかしも避けましょう。

対面とオンラインを使い分ける

コロナ禍での制限が、採用活動や内定者フォローにおけるオンライン活用のきっかけになった企業も多いのではないでしょうか。オンラインには、対面と比べて時間や場所の拘束が少ないという強みがあります。

内定期間は、授業だけでなく、実験や試験、教育実習や博物館実習といった資格取得のための実習などで、スケジュールに余裕がない人も少なくありません。また地方在住であるなど、企業への来訪が簡単でない内定者もいるでしょう。こうした内定者の負担を抑えるために、内容や本人の希望によっては、内定者フォローにオンラインを活用するのも方法の一つです。

企業側にも、会場や人員の手配の負担を軽減できるなど、オンラインならではのメリットがあります。実地での体験が重要な内容は対面で、個別のスケジュール調整を要する面談や、企業側から発信するだけの内容はオンラインでといったように、内容や状況に応じて使い分けるとよいでしょう。

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内定者研修の実施状況と内定者のホンネ調査

近年の内定者と企業、それぞれに対して内定者研修に関するアンケート調査を実施いたしました。
その調査結果を基に、研修を通して内定者のエンゲージメントを高めるためのポイントを解説します。

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まとめ

新卒採用の売り手市場が継続し、内定辞退率は65%超というデータも。多くの企業にとって内定辞退のリスクが付き物である現在、優秀な人材の確保には、内定者をつなぎ留めて入社を決意してもらう内定者フォローが必須です。内定者の声からも、入社する企業の選定や自身との相性の見極めに内定者フォローを役立てる意識がうかがえます。

内定者フォローには、主に以下の方法があります。

内々定通知
面談・定期連絡
内定者懇親会
内定式
内定者研修
社内イベントなど

本文では、内定者への各種調査結果も踏まえながら、それぞれの内定者フォロー施策がどのように入社意思決定を後押しするのか解説し、また具体的な実施方法の例についても述べています。

こうした施策を通じて、内定者と自社との信頼関係を構築し、入社に向けて意欲を向上させるには、内定者の立場に寄り添う姿勢が欠かせません。具体的には以下のポイントを押さえるとよいでしょう。

・内定者の不安を解消する
・内定者の負担を考慮した頻度・内容にする
オワハラ・参加の強制にならないよう注意する
対面とオンラインを使い分ける

その企業ならではの特徴を打ち出したプログラムや、オンライン施策との組み合わせなど、内定者フォローの方法は広がっています。内定辞退を防止し、魅力ある人材を確実に入社につなげるため、自社に合った効果的な内定者フォローについて、改めて考えてみる余地があるのではないでしょうか。

[1] リクルート 就職みらい研究所「就職プロセス調査(2023年卒)「2023年3月度(卒業時点) 内定状況」」,2023年3月27日公表,p.3(閲覧日:2023年7月18日)
[2] マイナビキャリアリサーチLab「マイナビ 2023年卒内定者意識調査」,2022年7月26日公表,p.36(閲覧日:2023年7月18日)
[3] 内閣官房「2024(令和6)年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請等について」,2023年4月10日公表,p.1(閲覧日:2023年7月18日)
[4] マイナビキャリアリサーチLab「マイナビ 2023年卒内定者意識調査」,2022年7月26日公表,p.82(閲覧日:2023年7月18日)
[5] 株式会社ディスコ「調査データで⾒る「入社に向けた内定者フォロー」-2023年卒調査-」,2023年3月27日公表,p.9(閲覧日:2023年7月18日)
[6] マイナビキャリアリサーチLab「マイナビ 2023年卒内定者意識調査」,2022年7月26日公表,p.83(閲覧日:2023年7月18日)

参考)
読売新聞オンライン「人事課長投稿「なめるなよ」「露骨にエコ贔屓する」…内定者自殺[STOP ネット暴力]」, 2020年7月27日,https://www.yomiuri.co.jp/national/20200727-OYT1T50097/ (閲覧日:2023年7月18日)
内閣官房「2024(令和6)年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請等について」,2023年4月10日公表,https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/shushoku_katsudou_yousei/2024nendosotu/betten1.pdf  (閲覧日:2023年7月18日)
マイナビキャリアリサーチLab「マイナビ 2023年卒内定者意識調査」,2022年7月26日公表, https://career-research.mynavi.jp/wp-content/uploads/2022/07/f14939c36ae2488cac4be436d7397031.pdf (閲覧日:2023年7月18日)
KDDI「内定者期間って何をするの?入社までのステップを公開!」,2022年9月21日,https://career.kddi.com/andkddi/category/recruitment/22092901.html(閲覧日:2023年7月18日)
株式会社サイバーエージェント「内定者向けスタートダッシュ応援プログラム「DASH」」,2022年9月12日,https://www.cyberagent.co.jp/careers/students/dash/(閲覧日:2023年7月18日)
GA technologies(GAテクノロジーズ)グループ「内定者向けの資格支援をご紹介!」,2021年10月13日,https://mag.ga-tech.co.jp/careers/mag/10975/(閲覧日:2023年7月18日)