「中堅社員研修を実施している企業は多くはないようだが、うちの会社はどうするべきだろうか」

HR総研の調査によると、中堅社員研修を実施している企業は34%で、実施していない企業が多数派となっています。従業員1,001人以上の大企業ですら、実施している企業は50%にとどまっています[1]

同調査によると階層別研修として新入社員研修の実施率は8割以上であり、比較すると中堅社員研修の優先度がかなり低いことがわかります。

しかし、中堅社員はチームや部署の主力として働き、上司の補佐役と若手の指導役を担う、組織の中核となる人材です。中堅社員への教育を十分に行うことにより、管理職や次世代リーダーとしてふさわしい人材が育成できます。

また、優秀な中堅社員を育成することで、その指導を受ける若手の成長も期待でき、ひいては企業全体の成長につながります。

本稿では、中堅社員研修の重要性、中堅社員の役割・求められるスキル、研修のポイントなどを解説します。

[1] 「【HR総研】「人材育成(階層別研修)」に関するアンケート(調査期間:2021年8月23~30日)」,『ProFuture株式会社/HR総研』,2021年11月18日, https://www.hrpro.co.jp/research_detail.php?r_no=321 (閲覧日:2021年11月18日)

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中堅社員とは?研修の対象者

「中堅社員」の定義は企業によって異なりますが、おおむね入社5~10年ほど、20代後半~30代前半の従業員を指します。係長や主任といった役職がついている場合もあります。

若手社員よりも知識や経験があり、現場の主力として活躍が期待される立場です。

部下やチームの後輩の上に立つ立場となっている場合もあり、内外に対するコミュニケーション能力をはじめ様々な能力が求められることが考えられます。

中堅社員のあるべき姿とは?求められる役割

ここでは、中堅社員の役割や求められる能力を整理し、研修の必要性を考えてみます。中堅社員には、以下のような役割を果たすことが求められます。

  • 部署・チームのメインプレーヤー
  • 組織と現場のパイプ役
  • 若手社員の育成

部署・チームのメインプレーヤー

中堅社員は、若手社員よりも知識や経験が豊富です。専門知識も十分に積み上がっており、メインの戦力として活躍することができます。

業務において中心人物となりオーナーシップやリーダーシップを発揮するだけでなく、メンバー一人一人に目を配り、チームのエンゲージメントを高めることも期待されています。

組織と現場のパイプ役

管理職から伝えられる組織の方針や指示を理解し、現場の若手・新入社員に、その重要性や内容を分かりやすく伝えることも重要な役割の一つです。

現場が今どのような状況なのかを管理職に伝えてマネジメントの補佐をしたり、現場で若手とうまくコミュニケーションを取りながら、管理職が期待する成果を挙げたりすることが求められます。

若手社員の育成、後輩指導

集合研修などを担当するのは管理職や人事部員が多いかもしれませんが、日頃、若手社員に一番近い存在は中堅社員です。

中堅社員は、自身が培ってきた知識や経験を基に、若手社員の相談に乗り、適切なアドバイスをすることが求められます。若手社員にとって身近な存在である中堅社員の経験談やアドバイスは受け入れやすく、目標作りの参考にもなります。

中堅社員の質が、若手社員の成長を左右するとも言えるでしょう。

以上が中堅社員に求められる役割です。

中堅社員研修の現状

中堅社員研修を行っている企業は少ない

中堅社員研修の実施状況
HR総研(ProFuture株式会社)2021年調査(https://www.hrpro.co.jp/research_detail.php?r_no=321)を参考に作成

前出のHR総研の調査によると、60%以上の企業で中堅社員研修が行われていません。その理由としては、以下のような中堅社員の特徴が影響していると考えられます。

  • 部署やチームの中心人物として多くの業務をこなしており、多忙である
  • 一人で問題なく仕事をこなせるため、本人も会社も研修の必要性を感じていない
  • 新入社員や管理職と異なり、入社時期や昇進のタイミング、求められるスキル・役割などがバラバラであるため、研修を実施するタイミングが難しい

しかし、中堅社員はいずれ会社を背負って立つ存在です。管理職や次世代リーダーとなる前段階として、目の前の仕事をこなすだけでなく意識改革を行い、さまざまな知識やスキルを向上させていく必要があります。

中堅社員研修を実施すべき理由

中堅社員研修を行っている企業が少ないのはなぜなのでしょうか。ここでは、中堅社員の役割や、中堅社員を育成する効果から研修の必要性を考えてみます。

中堅社員は企業の成長にとって重要だが、伸び悩みを起こしやすいため

中堅社員がその能力を存分に発揮することができれば、企業の生産性は向上し、成長に必要な革新も起こりやすくなるでしょう。

しかし、中堅社員の伸び悩みを課題にしている企業も多いようです。業務に慣れてモチベーションが低下してしまったり、会社に不満を感じてチャレンジ精神を失ってしまったりする中堅社員も少なくないのです。

逆に言えば、伸び悩みの状況を改善することで企業の成長に繋がりやすい重要なポジションとも考えられるでしょう。

30代の転職理由の20%は「社員を育てる環境がない」こと

中堅社員が教育を求めていることも、中堅社員研修を実施すべき理由の一つです。

転職サービスdodaが2022年に実施した調査によると、過去1年間に転職した30代ビジネスパーソンの20%が「社員を育てる環境がない」ことをその理由として挙げています。また、「スキルアップしたい」と回答した方は28.5%と、いずれも成長できる環境を求めて転職を決意したようです。

つまり、日々の業務に多忙な中でも、研修などを通した能力向上の機会を求めている社員は少なくないということが分かります。

中堅社員は日々の業務が忙しいからと研修の実施を怠っていると、優秀な人材が外部へ流出してしまう可能性もあるでしょう。

企業側が積極的に成長の機会となる研修を実施していくことで、中堅社員のエンゲージメント向上にも寄与するのではないでしょうか。

参照:転職サービスdoda(パーソルキャリア株式会社)転職理由ランキング【最新版】

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中堅社員研修の目的

中堅社員研修の目的

中堅社員研修は、中堅社員としての役割を果たすため、必要な能力を身に付けることを目的として行われます。

具体的には、以下のようなことが目的とされます。

  • 新入社員・若手社員の育成の仕方を学ぶ
  • あらゆる方面とのコミュニケーション方法を学ぶ
  • リーダーシップとオーナーシップを学ぶ

若手社員の育成の仕方を学ぶ

中堅社員の役割の一つが若手社員の育成であるため、育成の仕方を学ぶことは必須です。

基本的なビジネススキルや職種に応じた知識・スキル、業務の流れなどについて、分かりやすく教えられる必要があります。

また、若手社員に一番近い先輩・上司として、業務やそれ以外についての相談に乗り解決に導く、メンター的な役割をこなすことも求められます。

あらゆる方面とのコミュニケーション方法を学ぶ

若手社員時代の業務は、上司・先輩や後輩といった、縦の関係者のみで完結することも多くあります。しかし中堅社員になると、他チームや他部署、他社、下請業者など横の関係者が多くなってきます。

必要な連絡や調整・交渉などをスムーズに行うため、コミュニケーションスキルの強化は欠かせません。

リーダーシップとオーナーシップを学ぶ

中堅社員になると、チームやプロジェクトにおいてリーダー的な役割を担う機会が出てきます。その際にしっかりメンバーをまとめられるよう、リーダーシップを学んでおく必要があります。

また、若手社員時代は、上司や先輩の指示どおりに自身の仕事をこなすことが求められました。しかし中堅社員は、上司や先輩の指示に従うだけでなく、自ら考え、主体的に動くことも求められます。特にVUCA時代と言われる今は、スピード感を持って臨機応変に世の中の動きに対応していく必要があるため、殊更その傾向が強くなっています。オーナーシップを発揮し、任された仕事に当事者意識を持って取り組むことが重要です。

以上が中堅社員研修を行う目的となります。中堅社員は、今後、先行き不透明な社会で企業の将来を担うことになります。彼らが今まで培ってきた知識や経験、マインドをさらにブラッシュアップさせ、時代の流れに対応できる力をつけてもらいましょう。

中堅社員研修の実施で期待できる効果

中堅社員が組織に与える影響と育成のメリットについて解説します。

前述の通り、中堅社員は管理職と若手社員双方に深く関わります。そのため、中堅社員の成長度合いが双方の、ひいては企業全体の質や成長に影響を及ぼします。

つまり、中堅研修によって手厚い教育を行うことで、以下のような効果が期待できます。

  • 管理職や次世代リーダー候補の育成促進
  • 若手社員にとって良いロールモデルができる
  • 企業の業績向上

管理職や次世代リーダー候補の育成促進

企業が管理職や次世代リーダーの候補を選定する際、もし十分な能力のある中堅社員がいなければ、外部からの雇用を検討しなければなりません。いくら現場で頑張っても昇進できないということであれば、若手社員のモチベーションも下がってしまうでしょう。

中堅社員に適宜必要な研修を行うことで、管理職や次世代リーダーを任せられる実力をつけていくことが可能になります。実際に管理職やリーダーに昇進して活躍するようになれば、その姿を見る若手社員のモチベーションも維持できます。

若手社員にとって良いロールモデルができる

中堅社員は、良くも悪くも、距離が近い若手社員のロールモデルとなります。

中堅社員への教育が不十分で、ビジネスパーソンとしての能力が低い場合、若手社員の目標となるレベルも下がってしまいます。そのため、本当はもっと成長できるはずだった若手社員が低迷してしまう可能性があります。

逆に、しっかりと教育を行い、中堅社員の知識やスキルが高い状態を維持できると、若手社員が目指すレベルも高くなります。若手社員が「この人のようになりたい、一緒に働きたい」と思えるような中堅社員がいることで、若手社員の業務遂行能力はもちろん、エンゲージメントの向上も期待できます。

企業の業績向上

中堅社員は、若手社員時代よりも受け持つ仕事の幅が広がり、求められる知識やスキルのレベルも高く、複雑になっています。人によってはチームやプロジェクトのリーダー的存在となり、その成果が業績に直結する場合もあります。

高度かつ重要な業務の遂行を教育によって支援することで、中堅社員の仕事のクオリティを高めることができます。その結果、チームや部署の成績が向上し、やがて企業の業績向上にもつながるでしょう。企業の中で主戦力となる中堅社員の成長は、企業の成長に欠かせません。

ここまで、企業の事情や中堅社員の役割、中堅社員を育成することのメリットを見てきました。中堅社員は、企業の主戦力であり、管理職や若手社員に大きな影響を与える存在でもあります。

中堅社員の成長=企業の成長と言っても過言ではないでしょう。このようなことから、中堅社員研修を行う効果は高いと考えられます。

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中堅社員研修で学ぶべき内容

中堅社員研修で学ぶべきスキル

ここでは、中堅社員研修の目的を果たすために学ぶべきスキルの詳細を見ていきます。

中堅社員には、特に以下のようなスキルが求められます。

  • コミュニケーション能力
  • ネゴシエーション
  • リーダーシップ
  • オーナーシップ
  • フォロワーシップ
  • ティーチングとコーチング
  • 課題発見・解決力
  • 業務に必要な専門スキル

コミュニケーション能力

第2章でご紹介した中堅社員の役割を果すために、コミュニケーション能力の強化は必須です。

まず、管理職と現場の若手社員のパイプ役として、管理職の方針や指示を正しく理解し、現場の若手社員に分かりやすく伝える必要があります。また、自身が中心となってビジネスを進める機会が増えるため、円滑にビジネスを進めるためのコミュニケーション方法を学ぶ必要があります。

加えて、若手社員に業務の指導をしたり、悩みを聞いたりして解決に導くための適切なコミュニケーション方法も知っておくべきでしょう。

上司の指示通りに業務をこなすことが第一であった若手社員時代よりも、高度なコミュニケーション能力を身に付けることが求められます。

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ネゴシエーション(交渉)

ネゴシエーション(交渉)とは、互いに利益を得るための合意や調整を目的として、互いに情報提供しながら議論をすることです。

チームの中心人物となってビジネスを円滑に進めようとしたとき、さまざまな方面と調整を行う際に重要なスキルの一つになります。

ネゴシエーション(交渉)は、場数を踏むことで鍛えられる部分も多々ありますが、技術として修得することが可能です。論理的な分析やプレゼンテーション能力などを鍛えることで、相手と対等に渡り合えるようになります。

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リーダーシップ

中堅社員になると、個人成績だけでなく、チームで中心的な役割を担う機会が増え、その成果を問われる機会が増えてきます。

メンバーの状態を気にかけて都度必要な支援や指導を行い、それぞれの目標とチームの目標達成のために行動できるようになるとよいでしょう。

リーダーシップとは他人や組織を導く能力を指すため、実際にリーダーという立場でなくとも発揮することが可能です。リーダーシップは先天的な性格や資質によるものと考えられがちですが、実は学習や経験によって身に付けることができるものです。

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オーナーシップ

オーナーシップとは、任された仕事に対して、当事者意識を持って主体的に取り組む姿勢のことです。

リーダーシップは「他人や組織を導く能力」であり、他者にベクトルが向けられるのに対して、オーナーシップは自分にベクトルが向けられています。

中堅社員は、個人だけでなく、チームの課題にも当事者として積極的に取り組んでいかなければなりません。オーナーシップの発揮によってチームメンバーと信頼関係が構築でき、チームの生産性やチームワークを高めることができます。

フォロワーシップ

フォロワーシップとは、上司やリーダーをフォローする能力のことです。管理職を補佐する中堅社員にとって重要な能力となります。

チームや組織の成果を最大化するにはどう行動するべきか自身で主体的に考え、判断し上司やリーダーを支えることが求められます。

なお、フォロワーシップはリーダーシップと互いに補い合う関係にあり、両者のスキルを高めると相乗効果を得ることができます。

ティーチングとコーチング

どちらも部下や後輩の育成・指導に欠かせない能力です。

ティーチングとは、自分の知識や経験などを相手に教えることです。

一方、コーチングとは、相手の話を傾聴し、適切な質問をすることによって相手の自発的な成長を支援することです。

ティーチングは一方的に「教える」のに対し、コーチングは双方向の対話によって相手の答えを「引き出す」という違いがあります。

自分の知識や経験などを教える場合はティーチング、主体的な行動や多面的な視点を学んで欲しいなど、さらなる成長を期待する際にはコーチングというように、両者をよく理解して組み合わせるとよいでしょう。

課題発見・解決力

チームや部署の中心人物となる中堅社員には、与えられた課題をどう解決するかだけでなく、自ら何が課題なのかを正しく速やかに把握し、解決することが求められます。

多くの複雑な課題を効率よく解決に導くには、場当たり的な対策ではなく、論理的・系統的なアプローチを活用することが必要です。

そのためには、ロジックツリーなどのツールやフレームワークを学ぶとよいでしょう。仮説思考のトレーニングも効果的です。

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業務に必要な専門スキル

管理職を適切にサポートしたり、部下や後輩を指導したりするには、経験に裏打ちされた十分な専門知識やスキルが必要です。

管理職を補佐し、部下・後輩を指導する中堅社員の能力が高ければ高いほど、管理職のマネジメントの質や、部下・後輩の働きに良い影響を与えます。

また、最新の技術を学ぶことや、現在のスキルをさらに強化することも欠かせません。

日々スキルアップのための努力をする姿や、その積み重ねによって業務をスムーズに遂行する姿を見せることで、周囲からの信頼も高まります。

企業側が行う中堅社員研修以外にも、Web・新聞などからの情報収集やチーム・同僚などとの勉強会、eラーニングや外部のセミナー参加など、従業員の自主的な学びを積極的に推奨するとよいでしょう。

これらのスキルを高めることで、中堅社員が自信を持って業務にあたることができるようにして、さらなる成長を後押ししましょう。

中堅社員研修プログラムの事例

ここでは、中堅社員研修のプログラムの具体的な事例をご紹介します。

こちらは、入社5、6年目の従業員を対象として想定しています。そろそろ中堅社員としての意識づけを行いたい、周囲と良好な関係を築きながら業務を遂行するマインドや具体的な方法を学んでほしいということを課題としたプログラムです。

1. 中堅社員に求められること(グループディスカッション)

  • 上司から求められること
  • 部下・後輩から求められること

2. オーナーシップを学ぶ

  • オーナーシップとは何か(グループディスカッション)
  • オーナーシップをどのように発揮するか
  • リーダーシップとの違い

3. フォロワーシップを学ぶ

  • フォロワーシップとは何か(グループディスカッション)
  • オーナーシップをどのように発揮するか
  • チームのビジョンの理解と能動的な行動
  • 上司との良好なコミュニケーションの取り方

4. リーダーシップを学ぶ

  • リーダーシップとは何か(グループディスカッション)
  • リーダーシップをどのように発揮するか
  • 部下・後輩と信頼関係を築き、効果的に指導するには

5. 問題発見・解決力を強化する

  • 「問題発見」とはどういうことか(グループディスカッション)
  • 問題発見から解決までのプロセス
  • 論理的思考に必要な要素とは
  • 問題の原因追及・解決のためのツールやフレームワーク

6. まとめ

なお、オーナーシップ、フォロワーシップ、リーダーシップについては、より中堅社員に求められると考えられる順番となっています。

中堅社員は自身の通常業務だけでなく、組織横断的なプロジェクトなどでもオーナーシップを求められる立場です。また、管理職である上司を補佐するだけでなく、チームメンバーや後輩などの手本として彼らを支えるためのフォロワーシップも求められます。

この2つを土台として、管理職やリーダー的立場になる機会に備えてリーダーシップを学び、最後により効率的に業務を遂行する具体的な術を学ぶ、という流れが効果的であると考えられます。

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中堅社員研修を成功させるポイント

中堅社員研修を成功させるポイント

中堅社員研修の効果を高めるには、以下のようなポイントを押さえておくとよいでしょう。

若手社員から中堅社員としての意識の変革を促進し、リーダーや管理職候補として十分なスキルを身に付けるための、自発的な成長の動機付けを行います。

  • 対象者や人材像、テーマを明確にする
  • 今までを振り返り、今後について考える機会を設定する
  • 広い視野を持って主体的に仕事を進めることを意識させる

対象者や人材像、テーマを明確にする

対象者や人材像、テーマを明確にするのが大切なのは社員研修全般に言えることですが、中堅社員研修では特に重要です。

既述のとおり、中堅社員は新入社員や管理職と異なり、入社や昇進のタイミングや求められるスキルのレベル・役割などがそれぞれ違います。「このタイミングでこのテーマの研修を一斉に実施する」ということが難しく、これは中堅社員研修が行われにくい理由の一つと考えられます。

そのため、例えば、「後輩の指導に慣れてきた入社7~10年目の従業員を対象に、改めてコーチングの研修を行う」「プロジェクトリーダー候補を選抜しリーダーシップ研修を行う」など対象者やテーマを明確にすることで研修の機会を確保しやすくなり、企業の将来を担うにふさわしい人材の育成を促進できます。

今までを振り返り、今後について考える機会を設定する

中堅社員は、若手社員よりも知識や経験を積み重ねてきており、業務の進め方や周囲の人たちの関わり方などについて、自分なりのやり方を持っています。

これまで身に付けてきたスキルや仕事のやり方を振り返り、今後、より効率よく仕事を進めるには、自分なりのやり方をどう変えていけば良いか、自分が希望するキャリアを実現するにはどのようなスキルを伸ばしていくべきなのかなどを検討してもらいましょう。

自分の現状と将来の理想の姿を比べることで目標が明確になり、今後の成長へのモチベーションを向上させることができます。

広い視野を持って主体的に仕事を進めることを意識させる

若手社員時代は、上司の指示どおりに業務をこなしていれば良かった部分が大きいと思われます。しかし、中堅社員はそれだけでは十分とは言えません。

中堅社員は、自身の業務だけでなく、メンバーと協力してチームの課題にも積極的に取り組む必要があります。会社としての方向性や、他社の動向、社会情勢なども考慮して課題の解決策を検討しなければなりません。

管理職となる準備段階として、広い視野を持ち、組織の中で全体像を見ながら仕事を進める重要性を認識してもらいましょう。

以上のようなポイントを押さえ、中堅社員研修の効果をさらに高めていきましょう。

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中堅社員研修を外部委託する際の費用相場

中堅社員研修の企画・実施は、外部の研修サービス企業に委託することもできます。

その際の費用は、例えば、一日で完結する公開講座型のものでは数万円~/1人、2日にわたるプログラムで10万円~/1人などがあります。

研修サービス企業によって、公開講座型や企業への講師派遣などさまざまな形態があり、費用も異なります。気になるものがあれば、まずは見積りを依頼してみるとよいでしょう。

中堅社員研修にeラーニングを活用するのも有効な手段です。従業員数が多ければ多いほど、対面研修より安価に実施することが可能になります。複数のeラーニングを組み合わせて実施することで、より効果を期待できるでしょう。

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まとめ

「中堅社員」の定義は企業によって異なりますが、おおむね入社5~10年ほど、20代後半~30代前半の従業員を指します。係長や主任といった役職がついている場合もあります。
若手社員よりも知識や経験があり、現場の主力として活躍が期待される立場です。

HR総研の調査によると、中堅社員研修の実施率は34%と、新入社員研修の実施率が8割以上となっていることに比べて、かなり低くなっています。
60%以上の企業が中堅社員研修を行っていない理由としては、以下のような中堅社員の特徴が影響していると考えられます。

  • 部署やチームの中心人物として多くの業務をこなしており、多忙である
  • 一人で問題なく仕事をこなせるため、本人も会社も研修の必要性を感じていない
  • 新入社員や管理職と異なり、入社時期や昇進のタイミング、求められるスキル・役割などがバラバラであるため、研修を実施するタイミングが難しい

しかし、中堅社員はいずれ会社を背負って立つ存在です。管理職や次世代リーダーとなる前段階として、さまざまな知識やスキルを向上させていく必要があります。

中堅社員には、以下のような役割があります。

  • 部署・チームのメインプレーヤー
  • 組織と現場のパイプ役
  • 若手社員の育成

このような役割を担う中堅社員に手厚い教育を行うことで、以下のような効果が期待できます。

  • 管理職や次世代リーダー候補の育成促進
  • 若手社員にとって良いロールモデルができる
  • 企業の業績向上

中堅社員研修は、以下のようなことが目的として行われます。

  • 若手社員の育成の仕方を学ぶ
  • あらゆる方面とのコミュニケーション方法を学ぶ
  • リーダーシップとオーナーシップを学ぶ

中堅社員には、特に以下のようなスキルが求められます。

  • コミュニケーション能力
  • ネゴシエーション
  • リーダーシップ
  • オーナーシップ
  • フォロワーシップ
  • ティーチングとコーチング
  • 課題発見・解決力
  • 業務に必要な専門スキル

中堅社員研修の効果を高めるには、以下のようなポイントを押さえておく必要があります。

  • 対象者や人材像、テーマを明確にする
  • 今までを振り返り、今後について考える機会を設定する
  • 広い視野を持って主体的に仕事を進めることを意識させる

中堅社員研修の企画・実施は、外部の研修サービス企業に委託することもできます。研修サービス企業によって、公開講座型や企業への講師派遣などさまざまな形態があり、費用も異なります。気になるものがあれば、まずは見積りを依頼してみるとよいでしょう。

中堅社員研修を行うことは、企業の主戦力となる中堅社員だけでなく、彼らと関わりの深い管理職や若手社員、さらには企業全体の成長を促します。

ぜひ積極的に中堅社員研修を行い、優秀な管理職・次世代リーダー候補を育成していきましょう。

参考)
「中堅社員研修の目的と中堅社員が果たすべき3つの役割」,『Schoo for Business』,2021年10月19日, https://schoo.jp/biz/column/264 (閲覧日:2021年12月10日)
「中堅社員・リーダー研修プログラム」,『アイルキャリアカレッジ』,2021年9月29日, https://ill.co.jp/icc/middle/ (閲覧日:2021年12月10日)
「中堅社員|階層別の育成法を見る|人材育成・社員研修」,『株式会社ラーニングエージェンシー』, https://www.learningagency.co.jp/target/middle.html (閲覧日:2021年12月10日)
「中堅社員研修の重要性と内容|キーパーソンこそ受講すべき理由とは?」,『株式会社社員教育研究所』, 2020年5月11日, https://www.shain-kyouiku.jp/column/201908/003.html (閲覧日:2021年12月10日)
リ・カレント株式会社「「他人事な中堅社員」を「巻き込み型リーダー」に変える! ~組織の未来を切り拓く巻き込み型リーダーシップ育成の4つの力~」,『HRpro』,2019年2月27日, https://www.hrpro.co.jp/series_detail.php?t_no=1720 (閲覧日:2021年12月10日)
「中堅社員の研修でおすすめの社員研修会社8選」,『アイミツ』, https://imitsu.jp/list/training/mid-career-employee-training/ (閲覧日:2021年12月21日)