リーダー研修の目的、内容を解説!リーダーシップの発揮に必要なスキルとは?
「現在のビジネス環境に対応できるリーダーを育成するには、研修で何を学んでもらうべきだろうか」
部下やチームメンバーの力を最大限に引き出し、まとめ上げるリーダーは企業の組織力を高めるために必要不可欠な存在です。そして、成果を出すリーダーを育成していくためには、適切な「リーダー研修」を行うことが大切です。
本稿では、このような課題を解決に導くためのリーダー研修について、その目的や対象者、現在のビジネス環境で求められる新しいリーダー像と学ぶべきスキルを解説します。また、リーダー研修を外部に委託した場合の費用相場なども紹介します。
人材育成の基本から、計画の立て方、効果的な教育手法、そして学習管理システム(LMS)の最新活用法までをコンパクトに解説。人材育成に関する悩みや課題を解決するための完全ガイドです。
目次
リーダー研修とは?
リーダー研修とは、部署やチーム、社内プロジェクトなどをけん引する立場の社員のための研修です。主にリーダーシップ能力など、リーダーとしての業務を進めるために必要な能力を習得することが多くなります。
企業をけん引する管理職の社員や、部署の中でも部下をまとめる立場にある中堅社員が主な対象となりますが、これからプロジェクトの主担を任される有力な若手社員がリーダーシップを習得するために実施されるケースもあります。
リーダー研修が必要な理由
まず、なぜリーダー研修が必要なのか見ていきましょう。
企業のリーダー不足
リーダーが足りないというのはよく聞かれる話です。実際に、HR総研の2020年の調査[1]では、企業における「現在の採用・人材育成・配置・人材ポートフォリオに関する課題」で「次世代リーダー育成」が第1位(56%)、「3~5年後の採用・人材育成・配置・人材ポートフォリオ面での課題」も「次世代リーダー育成」が第1位(50%)となっています。
図表)企業規模別 現在の採用・人材育成・配置・人材ポートフォリオに関する課題(複数選択)
引用元)ProFuture株式会社/HR総研「HR総研:人事の課題とキャリアに関する調査 結果報告【人事の課題編】」,『HRpro』, 図表1-1, https://www.hrpro.co.jp/research_detail.php?r_no=276 (閲覧日:2021年7月30日)
図表)企業規模別 3~5年後の採用・人材育成・配置・人材ポートフォリオに関する課題(複数選択)
引用元)ProFuture株式会社/HR総研「HR総研:人事の課題とキャリアに関する調査 結果報告【人事の課題編】」,『HRpro』, 図表2-1, https://www.hrpro.co.jp/research_detail.php?r_no=276 (閲覧日:2021年7月30日)
この結果から、多くの企業がリーダー不足であり、将来的にも大きな課題となっていることがわかります。
リーダー育成が進まなかった要因
リーダー育成が進まなかったのにはさまざまな要因があります。その理由の一つには、日本企業が、さらなる発展を目指して挑戦するよりも、守りを固める体制を取っていた期間が長かったことがあります。
バブル崩壊後の不況、さらにリーマンショックを経る中で、企業は何よりも業績回復を優先せざるを得ず、将来的な発展のためのリーダー育成に力を入れる余裕がなかったのです。
その後、困難な状況の中で業績回復を果たした経営層は、その経営方針に自信を持っています。そのため、今までのやり方を変えることや、変革を先導するリーダーの必要性を、それほど感じていなかったこともあるでしょう。
さらに、今の時代はVUCA(=現在の世界やビジネスの情勢が、予測不可能で混沌とした状況)と言われています。ビジネス環境は目まぐるしく変化しており、従来のビジネスモデルが通用しない場面も多くなっています。
同様に、今まで活躍してきたリーダーが培ってきた経験やノウハウが通用せず、思うように成果を挙げられないことがあります。それが結果的に「優秀なリーダーがいない」と認識されている場合もあるでしょう。
企業としては、VUCA時代のビジネス環境に柔軟に対応できるリーダーの育成が急務であると言えます。
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リーダー育成への期待度が高い
企業の「リーダー研修」への期待は高まっている傾向にあります。
HR総研が企業の人事責任者や人材育成の担当者に対して行った2019年の調査[2]によると、企業が「現在、実施しているテーマ別研修」において、リーダーシップ研修の順位は5位(33%)にとどまっています。
一方で、「今後、強化する予定の研修」については、「リーダーシップ研修」が28%で最多となっています。
図表)今後、強化する予定の研修
引用元)ProFuture株式会社/HR総研「人材育成「テーマ別研修」に関するアンケート調査 結果報告(2019年)」,『HR総研』,2020年7月1日, 図表2-1, https://hr-souken.jp/research/885/ (閲覧日:2021年8月25日)
これは、変化が激しく不安定な時代だからこそ、リーダーが果たす役割への期待が大きくなっていることを表しているのかもしれません。
では、リーダー研修の受講者たちにはどのような課題があり、研修を通して何を学ぶことが期待されているのでしょうか。
同調査の「リーダーシップ研修の受講者に対して抱える課題」によると、「リーダーとしての在り方・姿勢・役割意識」が73%で最多であり、次いで「部下育成力」が61%、「人間関係構築力/コミュニケーション」が46%などとなっています。
図表)「リーダーシップ研修」の受講者に対して抱える課題
引用元)ProFuture株式会社/HR総研「人材育成「テーマ別研修」に関するアンケート調査 結果報告(2019年)」,『HR総研』,2020年7月1日,図表4-1, https://hr-souken.jp/research/885/ (閲覧日:2021年8月25日)
また、調査対象者から得た具体的なコメントとしては、「時代の変化に合わせた部下への指導方法」「リーダーとしての意識改革」などが課題として挙げられています。
上記から、リーダー研修の受講者たちには、組織のリーダーとしての心構えをしっかりと持ち行動することだけではなく、時代の変化や価値観の多様化に合わせて意識や行動を変えることも求められていることがわかります。
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これからのリーダーに求められる役割
VUCA時代のリーダーにはどのような役割が期待され、どのようなスキルが求められるのか見ていきましょう。
リーダーの役割には、以下のようなものがあります。
- 明確なビジョンを設定し、チームを導くこと
- メンバーの指導・育成を積極的に行うこと
- 適切な意思決定をスピーディーに行うこと
明確なビジョンを設定し、チームを導くこと
リーダーが成果を挙げるためにまずしなければならないのは、明確なビジョン=理想の未来を設定することです。ビジョンが明確になれば、そのために必要な課題を設定することができるからです。
ビジョンを設定した後はその実現をゴールとして、どのような人材配置をするのか、チームのメンバーに実力を最大限に発揮してもらうにはどのような働きかけをしたら良いのかなどを検討します。
ビジョンを実現するには、周囲の協力が欠かせません。そのため、設定したビジョンはチームで共有することも重要です。チーム内でビジョンを共有することで、業務を進める上での指針ができ、一体感を持って業務に取り組むことができます。
また、リーダーの行動は常にビジョンを体現するものでなければ説得力がありません。そのためには、一貫性を持って行動する冷静さや、周囲とのコミュニケーション力、課題にぶつかっても諦めないレジリエンスなども求められます。
つまり、リーダーはビジョンを示すだけでなく、実現のためにチームと協力し、ビジョン達成に導いていく能力が必要とされるのです。
メンバーの指導・育成
株式会社ジェイックの調査[3]によると、「組織がリーダーに成長を期待すること」の第1位は「部下の育成」です。
VUCA時代には、自らの意思や意見を持って主体的に行動する「自律型人材」の育成が重要といわれています。そのため、リーダーは自ら自律型人材のモデルとなり、部下が自律型人材に成長できるようサポートしていかなければなりません。
リーダーは、部下が実力を発揮してチームとして最大限の成果を出せるよう、さまざまなアプローチを検討する必要があります。具体的には、部下の自発的な行動を促す「コーチング」、自分の知識やスキルを伝える「ティーチング」などです。
知識を伝えるだけでなく、部下が自発的に行動するように導くことで、能力を引き出すことが重要です。もちろん、こうした指導・育成を行う際は、チームの一人一人と信頼関係を築くことも必要不可欠です。
株式会社ラーニングエージェンシーの調査では、部下とのコミュニケーション時間を長く取ると、部下の成長度合いが高いことが明らかになっています。[4]そのため、1on1ミーティングなどの機会を定期的に設け、部下とのつながりを意識的に維持することが大切です。
適切な意思決定をスピーディーに行うこと
意思決定は、リーダーの重要な役割です。リーダーや管理職といったチームをまとめる立場になると、自身の判断によって物事の方向性が決まる場面が増えていきます。
特にVUCA時代においては、スピーディーな意思決定が求められる場面も多いと考えられます。そのため、日頃から良い結果に結びつく判断ができるよう、適切な意思決定の方法を学んでおく必要があります。
また、意思決定した後のリスクに備えることも重要です。そのためには、判断が正しくなかった場合の軌道修正の方法についても学んでおく必要があるでしょう。
リーダー研修では、こういった役割を果たすために必要なスキルを身につけることが求められます。しっかりとした判断軸を持って決断し、状況に応じて軌道修正を行う柔軟さを持つためには、クリティカルシンキングなどのスキルが役立ちます。
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リーダー研修の目的
リーダー研修の目的には、以下のようなものがあります。
- リーダーとしての自覚を持ち役割を理解する
- チームでの目標設定や仕事の進め方を理解する
- リーダーとして身に付けるべきスキルを習得する
リーダーとしての自覚を持ち役割を理解する
まずは、受講者がリーダーとしての自覚を持ち、役割を理解することが大切です。
リーダーは、チームのいちメンバーであった時よりも、広い視野を持ち、全体を見ながら部下の配置や物事の動かし方を考えることが求められます。
また、リーダーの権限は、リーダーになることで自動的に備えられるわけではありません。権限を与えるのは、リーダーではなくフォロワーとなる部下やチームのメンバーです。
人は指示を受けた際、指示を出した人がその権限を持つにふさわしいか判断したうえで、それに従います。つまり、チームに支持されるような行動をとることも、リーダーとしての役割の一つだといえます。
中にはリーダーの権限や役割について、誤った認識をしている社員もいるかもしれません。リーダーとしての立ち位置や求められる役割を正しく理解することが、リーダー研修の第一歩ともいえるでしょう。
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チームでの目標設定や仕事の進め方を理解する
リーダーには、チームにおける適切な目標設定と、達成までの計画を立てることが求められます。
そのためリーダー研修では、個人の目標設定・達成プロセスとの違いや、チームで一体感を持って目標達成する方法を学びます。
リーダーは、チームだけでなく部下の目標管理のサポートも行います。個人の目標がチームの目標とかけ離れたものになっていないかすり合わせを行い、チーム全体で良い結果が出せるように調整するのが、リーダーの役割です。
また、リーダーになると今までとは違う形で仕事を進めることになります。例えば個人のタスク管理だけでなく、チーム全体の進捗確認、他部門との調整など、より広範囲に気を配って業務にあたる必要があるのです。
リーダーとして仕事を進め、チームの目標を達成するためには、時に部下を鼓舞し、説得力をもってチームを導くスキルが必要です。
リーダー研修でチームでの働き方について学ぶことで、強いリーダーシップを発揮し、チームを導くことができる人材の育成を目指します。
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リーダーとして身に付けるべきスキルを習得する
研修では、リーダーシップを基本として、リーダーが身に付けるべきスキルを学びます。リーダーが身につけるべきスキルは多岐にわたりますが、どれも才能ではなく、経験で身に付けることができるものです。
リーダーには、さまざまなタイプがあります。自分がどのようなリーダーを目指すのか、ビジョンを明確にし、目指すリーダー像に合わせて必要なスキルを身につけるというのも一つの方法です。
リーダー研修というと新しくリーダーになる従業員だけが対象と思われがちですが、長い間リーダーとして活躍している従業員も対象になります。その場合、今までの経験やスキルの上に、VUCA時代に求められるリーダーとしてのスキルを積み上げていく必要があります。
リーダーとして身につけるべきスキルについて、詳しくは第3章で解説します。
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リーダー研修の対象者
リーダー研修の対象者は、リーダーシップを発揮してもらう必要のある以下の従業員です。
- 次世代リーダー
- 管理職
- 中堅社員
- プロジェクトリーダー
次世代リーダー
次世代リーダーとは、「企業の将来を支える幹部候補や経営者候補」のことです。
変化が激しいビジネス環境の中では、前例にこだわらず柔軟な対応で組織を導くリーダーシップが求められます。
管理職
管理職は、個人だけでなくチームで結果を出すことが求められます。リーダーシップを発揮して部下と信頼関係を築き、チームワークを高めることが必要です。
リーダーシップに自信がない、あるいは不足している管理職はもちろん、優秀な管理職にも研修を行うことで、日頃のマネジメントを振り返り、見直してもらう機会にすることができます。新任管理職の場合は「これからは管理職として組織をまとめていくのだ」という自覚を持ってもらうためにも有効です。
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中堅社員
中堅社員は、ある程度の経験を積んでおり、一人で一通りの業務をこなせるようになっています。そのため、若手社員では難しい、業務上の創意工夫や、問題・課題を発見して上司に相談したり、解決策を提案することが期待されています。
既述のとおり、多くの企業で次世代リーダーの育成が課題となっています。上記のような点で見込みのある中堅社員に早期にリーダー研修を受けてもらうことで、将来の管理職や次世代リーダーを着実に育成することが可能になります。
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プロジェクトリーダー
リーダー経験のない従業員が抜擢される場合もあるため、役職や階層だけにこだわらず、プロジェクトリーダーにも受講してもらいましょう。
特にチームビルディングの方法や、チームとして目標を設定し、達成するまでの仕事の進め方や人材の動かし方などを学んでもらうとよいでしょう。
以上がリーダー研修の対象者となります。必要な従業員に漏れなくリーダー研修を受けてもらうようにしましょう。
コラム:リーダーとマネジャーの違い
リーダーとマネジャー、どちらも同じようなものなのでは?とお考えの方もいらっしゃると思います。
しかし、この2つには大きな違いがあります。
リーダーの役割は、メンバーをまとめ、指導し、目標達成に向けて導くことです。目指すビジョンを明確にしてメンバーに共有し、チームが進むべき方向を示します。
一方、マネジャーの役割は、目標達成に向けて、メンバーの行動や経営資源を管理することです。目標達成のための最善の方法や、ヒト・モノ・カネといった経営資源を、いつ、どのくらい、どのように投入するかを検討し、管理します。
簡単にまとめると、長期的な視点でチーム全体の方向性を示すのがリーダー、比較的短期的な視点でメンバーと経営資源を管理するのがマネジャーと言えます。
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リーダー研修で学ぶべき内容、スキル
リーダーには、以下のようなスキルが必要です。そのため、学ぶべき内容もこのスキルに即したものになるでしょう。
- リーダーシップ
- メンバーの指導、育成のためのスキル
- フィードバック
- キャリアデザイン
- ダイバーシティ
- チームビルディング
- ストーリーテリング
- 権限委譲
- 高い専門スキル
- 目標設定や判断力のスキル
リーダーシップ
リーダーシップとは、部下や組織を目標達成に導く能力のことです。
リーダーひとりの力では、チームで目標を達成することは不可能です。そのため、リーダーシップとは、部下の実力を引き出して成長を助け、それぞれが目標達成に向けて行動できるようにする能力であるとも言えるでしょう。
現代では、リーダーシップは生まれ持った「性質」ではなく「スキル」であり、学習や経験によって身につけることができると考えられています。
リーダーシップは時代によってさまざまな考え方があり、以下のように変遷してきました。
~1940年代:特性理論
最も古典的な理論。リーダーシップは天性のものであると考え、リーダーと非リーダーを特性(性格や資質)で区別するための研究が行われた。
1940~1960年代:行動理論
優れたリーダーと非リーダーの行動の違いを研究することで、リーダーシップを発揮する人の共通の行動をモデル化しようとした理論。特性理論とは対照的で、リーダーシップは行動によって発揮されると考える。
1960~1980年代:条件適合理論
優秀なリーダーに特定の特性・行動様式はなく、内的および外的環境の条件によってリーダーシップスタイルを変化させているという理論。
1980~現在:コンセプト理論
条件適合理論を元に、ビジネス環境やメンバーの状況に応じて起こる様々なパターンでのリーダーシップのとり方を研究したもの。環境や状況ごとに様々な理論がある。例えば、サーバント・リーダーシップ(1980年代~現代)、トランザクショナル・リーダーシップ(1990年代~現代)などが挙げられる。
以上のように、それぞれの時代の人々の状況や価値観、求められる能力によってリーダーシップのあり方は変化してきました。
現代では、激しく変化する厳しいビジネス環境に対応できるリーダーシップを習得することが必要でしょう。
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メンバーの指導、育成のためのスキル
既述のとおり、リーダーには、メンバーの実力を引き出し、成長を助けることが求められます。この役割を果たすためには、以下の6つのソフトスキルが必要です。
フィードバック
フィードバックとは、相手の行動について自分の意見を伝えるスキルです。相手に伝えるのは、業務上の指示やアドバイスではなく、また、非難や叱責といった感情的なものでもなく、純粋な「意見」であることが大切です。
フィードバックを適切に行うと、メンバーのモチベーションやパフォーマンスを向上させることができます。
「フィードバック」をeラーニングで社員教育
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キャリアデザイン
キャリアデザインとは、人生においてどのように働き、どのようなキャリアを築きたいのか、理想の姿をイメージし、実現させることです。
終身雇用が当たり前でなくなった今、従業員のキャリアについての意識は高く、リーダーが部下の相談に乗る機会も増えることが予想されるため、必須の知識と言えるでしょう。
ダイバーシティ
ダイバーシティとは、英語で「多様性」のことですが、ビジネス上では「多様な人材を活かす戦略」を指します。
リーダーには、ダイバーシティを体現するロールモデルとなること、多様性が受容される環境づくり、多様性を活かし組織のパフォーマンスをアップさせることなどが求められます。
チームビルディング
人間には、仲間が欲しい、集団に受け入れられたいという社会的欲求があり、この欲求を満たすには、職場でチームと協力して業務に取り組む必要があります。
良いチームを作るために、リーダーには、目的のフレーミング(意味を見出す・与えること)を行いメンバーのコミットメントを引き出すこと、心理的安全性の確保、失敗のフレーミング(失敗をミスではなく検証と捉え、次回の糧とすること)などが求められます。
ストーリーテリング
ストーリーテリングとは、印象的なエピソードや個人的な体験などのストーリーを語ることで、相手に強力なメッセージを伝えるスキルです。
人間が仲間との関係を維持するために、自身の属する組織について理解し、愛することはとても重要な要素です。リーダーが組織のDNAを伝承する伝説やエピソードについて、語り部の役割を果たすことで、メンバーはチームや組織に対する理解を深め、愛着を持つことができます。
権限委譲
権限委譲とは、上司が部下に自身の権限を分け与えて仕事を任せるスキルです。部下と上司、そして組織全体、3者ともの成長を図ることができるマネジメントの手法で、「エンパワーメント」や「デレゲーション」とも言われます。
権限委譲によってチャレンジさせることで、メンバーは成長し、自信をつけます。適切な権限委譲を行うには、リーダーがメンバーをリスペクトし、信頼関係を構築することが大変重要です。
高い専門スキル・業務遂行能力
リーダーの仕事に関する能力が低いと、チームに貢献できないだけでなく、発言や行動に説得力を持たせられず、メンバーに対する影響力が低下してしまいます。
リーダーは、高いレベルで業務を遂行するために、常にアンテナを広く張って最新情報を収集し、継続的な学習を行うべきでしょう。その姿勢をメンバーに見せることで信頼を得たり、モチベーションを喚起することができます。
目標設定や判断力のスキル
リーダーには、社会情勢や市場ニーズの変化、メンバーの能力などさまざまな要素を分析し、適切な目標の設定と達成までの計画を立てることが求められます。目標は、高すぎず低すぎず、メンバーの頑張り次第で手が届くレベルに設定することがポイントです。
また、問題が起こった際、計画通りに進めるか、軌道修正するべきか、見極めるための判断力も重要です。
新しい時代のリーダー像と「サーバントリーダーシップ」
前述のとおり、リーダー像は時代や社会状況によって変化していきます。現代に求められるリーダー像とは、どのようなものなのでしょうか。
かつて日本の経済が右肩上がりで成長していた時代に求められたのは、威厳があり、強い権力でメンバーを従えるカリスマ的なリーダーです。市場はほぼ国内に限られており、成功するビジネスモデルが確立されていたため、リーダーの指示に従うことで成果を挙げることができました。
しかしその後、グローバル化や技術の進歩などを背景に、ビジネスモデルや市場ニーズは多様化していき、VUCA(第1章を参照)という言葉が登場します。
今や、社内に多様な価値観を持つ人材が存在し、臨機応変な対応やイノベーションが常に求められるようになりました。
このような環境で成果を挙げるには、リーダーだけでなく、メンバー全員が能動的に行動する必要があります。
そこで求められるようになったのは、上からメンバーを支配するのではなく、下からメンバーを支えることで信頼を得て、チーム全体で協力して目標達成を目指す、支援型のリーダーシップです。
これは「サーバントリーダーシップ」(召使のリーダーシップ)と呼ばれます。「奉仕すること、尽くすことを通して相手を導く」という考え方です。サーバントリーダーシップは傾聴や共感などのコミュニケーションを重視するほか、メンバーの成長やコミュニティづくりに資するという特徴があります。
VUCA時代においては、多様な人材が、それぞれの強みを活かせる環境を作ることで、新たな価値やイノベーションを生み出すことができます。上記のような特徴を持つサーバントリーダーシップは、VUCA時代と相性が良いと言えるでしょう。
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リーダー研修を成功させるポイント
リーダー研修を成功させるポイントとしては、以下のようなことがあります。
・早期からリーダー研修を受けてもらう
・アクションラーニングを取り入れる
・定期的にリーダー研修を実施する
・研修の内容を実践し評価・改善する
早期からリーダー研修を受けてもらう
必要に迫られてからではなく、早期からリーダー研修を受けてもらい、時間をかけて育成することで、将来的なリーダー不足を防ぐことができます。
1-3.では、リーダー研修の対象を原則、中堅社員以上でご紹介しましたが、経験の浅い若手社員でも、見込みのある人材は対象に加えるとよいでしょう。
アクションラーニングを取り入れる
リーダー研修では、座学だけでなくワークやゲーム形式のものを取り入れると、アウトプットが伴うため、効果を高めることができます。
例えば、アクションラーニングという手法があります。アクションラーニングは、現実の経営課題をケースとして取り上げ、その解決に取り組むグループワークの一種です。
実際に起きている問題に取り組むことで、実践的なリーダーシップや意思決定能力を養成することができます。
定期的にリーダー研修を実施する
リーダー研修は単発で行われることも多いようですが、一度きりの研修で身に付けたスキルでは、激しく変化するビジネス環境に対応することが難しくなってしまいます。
定期的にリーダー研修を実施することで、タイムリーな課題にスムーズに対応することができるほか、身につけたスキルの維持・強化が可能です。
研修の内容を実践し評価・改善する
リーダー研修の効果を最大化するポイントは、研修の内容を実践し、評価・改善まで行うことです。
受講者は研修によって、曖昧だった理想のリーダー像や業務の進め方などを明確にすることができます。しかし、それを知識として身に付けるだけでは十分とは言えません。
実際の業務で実践して初めて、自身の行動が正しいのか、改善が必要なのか判断することができ、最善のやり方を見つけていけるようになるのです。
このように、PDCAサイクルを回すことが重要です。
以上のようなポイントを押さえ、効果的なリーダー研修を行いましょう。
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リーダー研修を外部委託する際の費用相場
一人数千円~20万円程度、研修方法によって異なる
リーダー研修にかかる費用は、公開講座に参加する形で、数時間で完結するものであれば、一人数千円から数万円程度が目安です。研修を提供する企業に依頼し、自社で数十人規模の集合研修を行う場合は、半日から1日の研修で10~20万円ほどのものが多いようです。
最近は新型コロナウイルス対策として、オンライン開催やeラーニングで完結するものも増えています。集合研修よりも費用を抑えられる場合も多いため、積極的に活用を検討してみてはいかがでしょうか。
リーダー研修におすすめのeラーニング
ビジネスパーソンなら知っておきたい「リーダーシップ力」養成コース
若手社員を次世代のリーダーに育成
次世代リーダーにとって必要となるスキルを習得できるのが、ライトワークスの「リーダーシップ力」を養成するeラーニングコースです。本コースではリーダーのスタイルを4つの型に分類し、リーダーシップに必須の知識を習得することにより、あらゆるビジネスシーンで活躍できるリーダー育成を目指します。
日々忙しい若手社員でも学習できるよう、コースに含まれる全てのコンテンツはスマホやタブレットにも対応しており、すきま時間を活用したスキルアップが可能です。
知識習得テスト「リーダーシップ スキル診断」付きコースもご用意!
知識習得の度合いをはかるオプション「リーダーシップ スキル診断」が付随したコースもご用意しております。
教材受講の前後に受けることで、受講によってリーダーシップに関する理解がどのように定着したか、知識の習得度を可視化することができます。
診断結果はグラフとコメント、結果分析で確認することができるため、自身に足りないのはどの部分なのかが一目で分かる仕組みとなっています。
人材育成の基本から、計画の立て方、効果的な教育手法、そして学習管理システム(LMS)の最新活用法までをコンパクトに解説。人材育成に関する悩みや課題を解決するための完全ガイドです。
まとめ
リーダー研修は、以下のような理由から必要とされています。
- 時代的な背景から次世代リーダーの育成が進んでおらず、不足している
- 従来のリーダーの知識や経験がVUCA時代で通用しないため、環境の変化に柔軟に対応できるリーダーを育成する必要がある
リーダー研修の目的には、以下のようなものがあります。
- リーダーとしての自覚を持ち役割を理解する
- 目標設定や仕事の進め方を理解する
- リーダーとして身に付けるべきスキルを習得する
リーダー研修の対象者は、リーダーシップを発揮してもらう必要のある以下の従業員です。
- 次世代リーダー
- 管理職
- 中堅社員
- プロジェクトリーダー
リーダーの役割には、以下のようなものがあります。
- 明確なビジョンを設定し、チームを導くこと
- メンバーの指導・育成を積極的に行うこと
- 適切な意思決定をスピーディーに行うこと
リーダーには、以下のようなスキルが必要です。
- リーダーシップ
- さまざまなソフトスキル
- フィードバック
- キャリアデザイン
- ダイバーシティ
- チームビルディング
- ストーリーテリング
- 権限委譲
- 高い専門スキル
- 目標設定や判断力のスキル
VUCA時代には、上からメンバーを支配するのではなく、下からメンバーを支えることで信頼を得て、チーム全体で協力して目標達成を目指す、支援型のリーダーシップが求められています。これは「サーバントリーダーシップ」(召使のリーダーシップ)と呼ばれます。
サーバントリーダーシップは傾聴や共感などのコミュニケーションを重視するほか、メンバーの成長やコミュニティづくりに資するという特徴があります。多様な人材によるイノベーションが不可欠なVUCA時代と相性が良いと言えるでしょう。
リーダー研修を成功させるポイントとしては、以下のようなことがあります。
- 早期からリーダー研修を受けてもらう
- アクションラーニングを取り入れる
- 定期的にリーダー研修を実施する
- 研修の内容を実践し評価・改善する
リーダー研修の費用は、公開講座に参加する形で、数時間で完結するものであれば、一人数千円から数万円が目安です。研修を提供する企業に依頼し、自社で数十人規模の集合研修を行う場合は、半日から1日の研修で10~20万円ほどのものが多いようです。
最近は新型コロナウイルス対策として、オンライン開催やeラーニングで完結するものも増えています。集合研修よりも費用を抑えられる場合も多くなっています。
優秀なリーダーを育成できるか否かは、企業の将来に直結します。ぜひこの機会に、リーダー研修の内容を見直してみてはいかがでしょうか。
[1] ProFuture株式会社/HR総研「HR総研:人事の課題とキャリアに関する調査 結果報告【人事の課題編】」,『HRpro』, https://www.hrpro.co.jp/research_detail.php?r_no=276 (閲覧日:2021年7月30日)
[2] ProFuture株式会社/HR総研「人材育成「テーマ別研修」に関するアンケート調査 結果報告(2019年)」,『HR総研』,2020年7月1日, https://hr-souken.jp/research/885/ (閲覧日:2021年8月25日)
[3]「当社アンケート結果「リーダーに期待することは『部下の育成』」役員・部長職など638名に聞いた、組織で求められるリーダー像」,『株式会社ジェイック』,2020年8月28日, https://kabuyoho.jp/discloseDetail?rid=20200828486620&pid=140120200828486620 (閲覧日:2021年8月3日)
[4] 株式会社ラーニングエージェンシー「【管理職1,070人の意識調査】
管理職の悩みダントツ1位は「部下の育成」/”部下の成長を感じていない”管理職が5年前の3倍に|新着情報|人材育成・社員研修」2020年7月20日, https://www.learningagency.co.jp/topics/20200727_03 (閲覧日:2021年8月3日)「部下が非常に成長している」と回答した管理職は、部下とのコミュニケーション時間が6時間以上(月間)の割合が45.8%となっています。
参考)
「リーダー研修の7つの目的とは?リーダーに求められる能力と研修内容」,『Schoo for Business』,2021年5月21日, https://schoo.jp/biz/column/253 (閲覧日:2021年8月10日)
篠原真都加「リーダーシップ研修のカリキュラム例や料金相場をご紹介|おすすめの研修会社10社比較あり」,『neocareer』2021年4月1日, https://www.neo-career.co.jp/humanresource/knowhow/b-contents-newgrad-leadership-kensyu-osusume_200414/ (閲覧日:2021年8月10日)
HRプロ編集部「「リーダーシップ研修」とは? そもそもの目的や対象者、内容などを解説」,『HRpro』, https://www.hrpro.co.jp/series_detail.php?t_no=2369 (閲覧日:2021年8月10日)
「リーダーシップ研修で何をする?研修の目的と効果的なプログラム」,『会議HACK!』,2020年3月17日, https://www.kaigishitu.com/meeting-hacks/detail/id=36743 (閲覧日:2021年8月10日)
「VUCA時代に求められるリーダーシップの新たなカタチ」,『JMAM』, https://www.jmam.co.jp/hrm/training/leadership.html (閲覧日:2021年8月10日)
「VUCA時代に求められるリーダーとは」,『リクルートマネジメントソリューションズ』,2020年2月17日, https://www.recruit-ms.co.jp/issue/column/0000000825/?theme=nextleader,innovation (閲覧日:2021年8月10日)
「「リーダーシップ研修」を徹底比較|実施する目的や具体的な内容/料金相場は?」,『HR NOTE』,2021年7月28日, https://hrnote.jp/contents/soshiki-kensyu-leadership-20200701/ (閲覧日:2021年8月10日)
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